2部分:第二章
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第二章
吹雪を起こせる巨人ですが吹雪は他でも起こります。それは恐ろしく強い力で彼でも足を止めてしまったりします。
この時ノルウェーの北から恐ろしい風が吹いていました。今にも家を吹き飛ばそうとまでしていてとても強い力です。寒く雪まで吹き荒れて恐ろしいまでです。
人々は家の中で凍えながら耐えています。しかしその家ですらきしみ今にも吹き飛ばされそうです。
「お母さん、このままじゃ」
「大丈夫だよ」
母親が娘に声をかけます。それでも親達も家が何時吹き飛ばされるか不安で仕方ありません。
「安心おし」
「うん」
子供達は親にすがりついています。暖炉の火は燃えていますがそれでも寒さは容赦なく襲ってきます。皆その中で不安にも苛まれています。けれどその時でした。
不意に嵐が家を襲わなくなりました。きしむ音が聞こえなくなり寒さも和らぎました。人々はそれを感じて吹雪が収まったのかと思いました。
「止んだのかな」
「どうかな」
それを受けて外に出てみます。しかし吹雪は止んではいませんでした。何と巨人が家々の前に立って吹雪を受け止めていたのです。
「巨人さん」
「何てことを」
「私のことは心配しないで下さい」
巨人は吹雪に正対しながら人々に答えます。
「風は。防いでみせますから」
「けれどこんな風じゃ」
「あんただって」
無事で済むとは思えません。人々は驚いた様子で巨人を気遣います。しかしそれでも巨人は下がろうとはしません。そこに立ち続けています。
「ですから心配いりません」
それでも巨人は言うのです。
「私は雪と氷でできていますから。寒いのも嵐も」
平気だと言って前に立ち続けました。吹雪は冬が終わるまで続き人々はずっと家の中で閉じこもったままでした。巨人はその間ずっと立って人々を吹雪から守っていたのでした。
冬が終わると吹雪も止みました。人々が外に出てみるとそこには誰もいませんでした。巨人の姿は何処にもありませんでした。
「吹雪に削られてしまったんだ」
「ああ、そうだ」
人々は見えなくなってしまった巨人を思って呟きます。彼等は助かりましたが失ったものはあまりにも大きかったのでした。
「おじちゃんは?」
「いなくなったの?」
子供達は巨人がいなくなったのを見て親達に尋ねます。けれど彼等も答えることはできませんでした。何故なら巨人がいなくなってしまって彼等もとても悲しかったのです。大人だから泣くことはできませんが子供達に訳を言えない程悲しかったのです。
「いや、それは」
「そのね」
何とか言おうとしますがやはり言えません。どうにも口ごもってしまいます。
「また帰って来るよ」
誰かがつい嘘を言ってしまいました。
「だから安心おし」
「そうなの?それじゃあ」
「また冬に」
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