2部分:第二章
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「ああ」
そのうえで頷きます。冬に何と言うべきか困りながら。
春が終わり夏になって秋も過ぎます。遂にまた冬がやって来ました。
「なあ」
大人達は冬が近付いてきて顔を見合わせます。
「もうすぐだよ」
「あの人は来ないだろうね」
「そうだろうな」
皆苦い顔をして言い合います。
「いなくなったからね」
「もう来ることはない」
「子供達が何て言うか」
嘘をついてしまったことを後悔します。けれど言ったことは戻りませんし冬もやって来ます。大人達は暗い顔で冬の訪れを待つのでした。
けれど冬が来ると。地響きの様な音が聞こえてきました。
「えっ」
「この音は」
皆その音には聞き覚えがありました。その音は。
巨人の足音でした。あの山の様な巨人がまたやって来たのでした。
「やあやあ」
「あっ、おじちゃんだ」
「また来てくれたんだ」
子供達は彼の姿を見て楽しげに声をあげます。けれど大人達は呆然としたままでした。
「どうしたんですか?」
巨人もそれに気付きます。それで声をかけてきたのです。
「そんなに驚いて」
「驚いたも何も」
大人達は巨人に対して言います。
「どうしてあんたまた」
「消えたっているのに」
「私は冬そのものですから」
彼等に巨人は優しく微笑んで言うのでした。
「冬が終わったら消えて。そして冬になったらまた蘇るのです」
「そうだったのですか」
「はい、そうなのです」
そう述べてきたのです。その優しい穏やかな声で。
「あの時消えたのもまたそうでした」
「吹雪で」
「ええ。冬が終わったから」
「それではですね」
人々はそれを聞いて問います。
「貴方は冬がある限り私達と一緒にいてくれるのですか?」
「その通りです」
巨人は答えてきました。、またにこりと笑って。
「ですから冬が終わればまた消えて冬が戻れば現われて。ずっと皆さんと一緒ですよ」
「一緒ですか」
「はい」
彼はそのうえで頷いてきました。
「何時までも何時までも」
「私達と一緒に」
「それでいいですよね」
「ええ」
大人達だけでなく子供達も彼の言葉に頷きます。この上なく温かい心で。
「これからもずっと」
「私達と一緒に」
こうして巨人はノルウェーの人々の前にまた戻ってきたのでした。そのまま何時までも何時までも彼等と一緒に仲良く暮らし、守っていったのでした。
優しい巨人 完
2007・2・5
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