1部分:第一章
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ますよ」
巨人は彼等にこう言いました。
「もうって?」
「はい、今ですよ」
「今って」
「何も贈ったりしていないけれど」
「いえ、贈ってくれていますよ」
巨人は笑って述べます。
「感謝の気持ちが伝わりますから。それが一番の贈り物なんですよ」
「私達の?」
「はい、私はそれが一番好きなんですよ」
人間達の明るく朗らかな顔を見て述べます。
「皆が喜んでくれているから。だから」
「そうなんですか」
「はい。だから私は働くんです」
彼はまた言います。
「皆さんの笑顔を見る為に。それが私への一番の贈り物なんです」
「けれどそれだと悪いですね」
誰かが言いました。やっぱり貰ってばかりじゃ皆気分がよくないのです。
「だったらこうしましょう」
巨人は言いました。
「私も皆さんの笑顔を見て皆さんも私の笑顔を見る。それでいいじゃないですか」
「私達の笑顔を」
「はい」
にこりと頷いてきました。日の光がその大きな身体で隠れて少し暗くなっていましたがそれでも笑っているのははっきりとわかりました。
「それでどうでしょうか」
「わかりました。それじゃあ」
「ええ、そういうことで」
皆も巨人もお互いの笑顔を見せ合うことにしました。巨人にとってはそれでよかったのです。人々が自分に対して笑顔を見せてくれるだけで。だからこそ悪い奴等からも人達を守りました。
「それ、行くぞ」
デンマークからならず者達がやって来ていました。彼等は雪の中に隠れて進んできます。誰もそれに気付くことはありません。
けれど巨人は違いました。すぐにそれに気付きました。
ノルウェーの皆を攻めようとする彼等を許すつもりはありませんでした。雪の森の中に隠れている彼等を見つけるとすぐに上からこう声をかけてきたのです。
「私は神だ」
「えっ」
「神様だって!?」
ならず者達は突如上から声が聞こえてきたので思わず辺りを見回しました。しかし巨人の身体はあまりにも大きくて山にしか見えません。だからわかりませんでした。
「そうだ、神様だ」
巨人は彼等が自分に気付いていないのをいいことに言葉を続けます。
「御前達はそれ以上先に行ってはならん」
「どういうことなんだ!?」
「一体何が何か」
「若し行けば恐ろしい吹雪に覆われるだろう」
そう言って実際に吹雪を起こします。森の中まで吹き荒び恐ろしい音が聞こえてきます。そのうえ凍えるまでに寒いのです。これは堪りません。
「うわわ・・・・・・」
「さあ、わかったか」
巨人はまた言います。
「御前達が去らなければいけないのが。悪いことはするのではない」
「どうする?」
「どうするったって」
彼等はその凍える吹雪の中で話し合いました。といってもここまで寒ければもう答えは出てい
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ