第一話ー滅魔士ー
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つは今いない。どこにも、いない。
いや、こんな清々しい日に暗い話は止めておこう。自分で自分にそう言い聞かせ、隣の村へと足を踏み出した。
そしてここから、俺の物語が始まった。
――――――滅魔士
遥か昔、まだ人類が火を起こすことさえできなかった時代から、この世界には魔と呼ばれる悪の根源が存在していた。
ある者は魔を災厄と恐れ、またある者は魔を神と崇め、そしてある者は魔を絶対悪と考え、恐れてきた。
魔には多くの種類が混在し、空を飛ぶ者、地を這う物、水に生きる者。見るもおぞましい者、美しい者、儚い者。
人を襲い、人を喰う。それが魔の生き様であった。
だが、人間とて喰われるだけの生き様など望むはずがない。彼らは魔に対抗すべく、魔のさらに元である、魔素を利用し、人から魔を産んだ。
魔を殺す魔を、生み出したのだ。
それが、滅魔士。以来人間は滅魔士を使い魔を狩り、平穏を求めていた。だが、滅魔士も魔であることに変わりはなく、偏見や虐待、迫害の矢面に立つことは必然だった。
彼ら滅魔士はそれでも戦い続ける。たとえ殺されかけようと、無視されようと、そこに魔がいるのなら――――――。
「にしてものどかな場所だなぁ……魔素も薄くて。この辺じゃ魔も出ねぇだろうよ」
魔素がなければ魔も居ない。これは俺達滅魔士だけでなく、一般人も知っていることだ。はっきりとした理由は分からないが、魔は魔素の強い場所を好む。養分にする魔もいるらしいが全個体そうではない。ちなみに、町や村は魔素の薄いところを滅魔士に探してもらい、そこに永住を決めるらしい。
「このまま村まで何事もないと助かるんだがなぁ……って言いたいがそううまくはいかねぇよな」
今歩いている道の先、カーブになっているところで黄ばんだ布製の一枚着を着て汗を垂らしながら倒れた荷馬車の荷台を持ち上げようと呻いている男の姿が。近くの草木の倒れ具合から、どうやら荷台を引く馬がなんらかの原因で逃げ出したのだろう。
流石に無視して通り過ぎるのも気まずいので、黒いシャツの袖を肘より上に捲り上げ男の肩を叩く。
「ちといいかい、おっさん。これは俺がやるから少し退いてな?」
ポーチから煙草を取り出し咥え、吸い込みそれを吐き捨てて四肢に力を籠める。その勢いに乗って流れる動きで倒れた荷台を難なく道に戻して見せた。そして少しばかり汚れた手をパンパンと払い、まくったシャツを七分ほどに戻す。
「一人でこれを……!?あ、あんさん一体何者だい!?ってそんなことはどうでもいいか……なんにしろ助かった!!馬が突然逃げ出してお陰で荷台があの有様……四輪だから押して行けるのが不幸中の幸いだな」
「気にすんなって。俺ぁただの通行人だよ。にしても、馬が何に
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