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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十七話 襲撃(その1)
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ん、何の音だ、騒がしいが。外は憲兵隊が警備しているはずだが…。妙だな、なにを騒いでいる。こちらに人が来るようだが、どうしたのだ?




■ リッテンハイム侯屋敷 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ

 リッテンハイム侯を含む貴族たちはある一室にいた。おそらく応接室なのだろう。高価そうな応接セット、美術品、家具。私には一生縁の無い代物だ。彼らは私たちを見ると驚いて口々に“何者だ、何の用だ”、“無礼な、ここを何処だと思っている”などと言っている。とそのときだった、バーンという音がして天井からガラスの欠片が落ちてくる。ヴァレンシュタイン少将だった。手には火薬式銃を持っている。何時の間にそんなの用意したんだろう。

「動かないでいただきましょう。それとこちらの許可なしに発言するのは止めてもらいます」
「なにをいうか、私を…」

抗議しようとするリッテンハイム侯を再びバーンという発砲音が止めた。ヴァレンシュタイン少将の撃った弾はリッテンハイム侯の頭上三十センチほどのところを通過し、侯の後ろにあった鏡を砕いた。ガラスの砕ける派手な音が部屋に響く。
「閣下がリッテンハイム侯だということは判っています。しかし次は首から上が無くなりますから、誰だか判らなくなりますね」

皆顔色が蒼くなっている。侯爵たちも私たちもだ、装甲擲弾兵たちだってどこかびくびくしている。まさかここで発砲するなんて思わなかった。もう後には引けない。皆わかっている。恐怖で腰が抜けそうだ。それなのにヴァレンシュタイン少将はいつもどおり穏やかに微笑んでいる。リューネブルク少将は何処か楽しげだ。私と目が合うとウインクしてきた。怖い。何考えてるの二人とも。

「さて、まずは彼らを拘束してください」
その声に侯爵たちは不平を上げるが、少将が銃を向けるだけで沈黙した。装甲擲弾兵たちが彼らを後ろ手に縛り拘束していく。拘束が終わるとヴァレンシュタイン少将はオッペンハイマー伯を連れてくるように言った。

「な、何のマネだ、ヴァレンシュタイン少将。こんなマネをして」
いきなり少将の右手がオッペンハイマー伯の顔面に叩きつけられた。銃で殴られた伯爵の顔から鮮血が飛び散る。倒れ掛かるオッペンハイマー伯を支えると咽喉に銃口を突きつけえぐりながら問いかけた。

「ヴァレンシュタイン大将です。私はあなたの上位者なのですよ、オッペンハイマー中将」
怖い。こんな少将は始めて見る。本気で殺す気だ。
「ここで何を話していました? エルウィン・ヨーゼフ殿下の暗殺ですか、それともエリザベート・フォン・ブラウンシュバイクの暗殺か。はっきりと答えてもらいましょう、憲兵隊副総監オッペンハイマー中将閣下」

にこやかに微笑みながら話す少将の言葉にオッペンハイマー伯は凍りついた。


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