Side Story
少女怪盗と仮面の神父 6
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「……バレバレですか。」
「バレバレですよ。何年溺愛してると思ってるの?」
ふふ……と楽し気な笑い声一つで、胸の奥に蟠りかけた嫉妬や疎外感が呆気なく霧散していく。
やはり、大人の余裕には敵わない。
「むぅー……ズルいなぁ。二、三日くらい、洗い物全部押し付けてやろうかと思ったのに」
「あはは、抜かりないわねぇ。先手を打って良かった」
薄い唇が額に降りて、柔らかな感触を残した。温かさと擽ったさで全身がむず痒くなる。
「仕方ない。私はできるだけ部屋に籠ってるから、上手くやってよ?」
「その言い方は不適切! 残念ながら、相手は他人以上・友人以下です。」
「やっぱり男か……」
「ほっぺむぎゅーとこめかみグリグリ、どっちが好き?」
「下世話でしたごめんなさい」
「解ればよろしい」
額と額を合わせ、どちらからともなくクスクスと笑い出す。
肩に置かれた両腕が嬉しくて、ミートリッテもハウィスの胴体を抱き締めた。
トクントクンと規則的に響く音を堪能してから、ゆっくり離れる。
「じゃ、また後でね。夕飯は先にもらっちゃうかも」
「了解。そのまま出てく?」
「うん。帰りは入れ替わりになるかな。はっきりとは決めてないけど」
「朝帰りじゃなければ構わなくてよ?」
「ぶごふッ!?」
背中に見送りを受けて二階へ上がろうと手摺を掴んだ途端の一言に、持ち上げた右足が空振りそうになった。
「な、何を言うかな!? 転けたら危ないでしょうが!」
「ふむ。その様子じゃ、虫はまだ付いてないのね。年頃だと思えば、安心して良いのか良くないのか……親心は複雑よ?」
わざとらしい嘆息に、口元を彩る意地の悪い歪み。仕返しの仕返しだ。
「もぉーッ! ハウィスのバカーッ!」
これ以上一緒に居たら手酷く揶揄われる。
手練手管の限りを尽くして娘を弄ぶ母から逃げろと、突き当たりの壁をぶち抜く勢いで階段を駆け上がった。
「……っと。いかんいかん」
与えられている部屋の扉を乱暴に閉める寸前、隣の部屋に居るだろうハウィスの知り合いを驚かせては駄目だと、腕を急停止させた。
極力静かに閉じて、こぢんまりした正方形の室内と向き合う。
正面に空を映した四角い窓と白いカーテン。その右隣に焦げ茶色のクローゼット。左隣に四つ足で支えられた木製のベッド。ふかふかな枕元には、お気に入りの『くらげタン人形』が鎮座している。
くらげタンとは、潮流の影響でネアウィック村の海岸全体がくらげだらけになった事件を期に、村を象徴する旗印として作られたマスコットだ。
青いカサの下に口腕を象った白く長い四本の棒が伸びていて、とにかく丸い。カサ上部に付けられた、本物には無い黒くて円らな瞳も妙に愛らしい。
もっとも、マス
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