Side Story
少女怪盗と仮面の神父 6
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は、ちょっと口惜しいけれど。
しかし……神だの不思議現象だのを全く信じていないミートリッテにさえ、微笑んだハウィスは本物の女神に見える。眩しさで目を細め……ふと、彼女の装いに違和感を覚えた。
「誰か来てるの?」
「え? あ、ああ……これ?」
仕事上、夜になれば豊満でしなやかな体の線を引き立てるドレスを着ているが、昼間は大体大きめでゆるゆるなシャツに、脛丈で動きやすいズボン姿だ。
変質者紛いの男が何時どんな風に現れても撃退できるようにと、自衛目的での落差だった。
今もいつもと同じ、皺が付き難い布地の白いズボンを穿いてるが……上に着ているのは、濃紺のぺプラム・トップスと襟ぐりで一体化した真っ白な花柄の総レースジャケット。
以前、似た格好のハウィスを見て「変わった形だね?」と尋いたら、「アンサンブルといって、着やすさが女性達にウケて街で流行してるらしい」と教えてくれた。アンサンブルを着るのは、街への買い物や誰かと会う時に限るとも。
淑女たるものが公衆の面前で臀部や足の形を露にするズボン姿なんて、はしたない! とか、一部に残る因習に従い、街での買い物はスカートが常装だ。着替えの途中でもなさそうだし、出掛ける感じでもない。家で誰かに会っているか、会おうとしてる……としか思えないのだが。
「似合う?」
締まった腰より少し上辺りでジャケットの裾をついっと摘まみ上げ、くるんと回転。流れる金髪と翻る裾から放たれた爽やかなミントの香りが、訝しむミートリッテの鼻を擽った。
「今、古い知り合いが久しぶりに来ててね。昔と現在進行形の話に花を咲かせてたトコなの。国外在住在勤だから、なかなか顔見れなくて……興味ある?」
(……ふぅーん……?)
群青の瞳を細めて窺うハウィスに、少々捻くれた感情が頭の奥を過る。
「あんまり会えない人と。久しぶりに。懐かしい話を。してるんでしょ? 私が知らないハウィス達の話を聴いてても居心地悪いし、元気いっぱいなお花に水をぶっかけるのは申し訳ないから。興味なんて全ッ然無いよ。全ッ然。で、男の人?」
「しっかりあるんじゃない、興味。返答は拒否させていただきマス。男だったらまた「その人と将来どうのこうの」と意地悪言うつもりでしょ」
「チッ バレたか」
「ミートリッテぇえー? 悪いのはこのお口? このお口なの?」
「いひゃいいひゃい! やうぇふぇハウィふ! ごうぇんわふぁいごうぇんわふぁい!」
ハウィスの細い指先が視線を落としたミートリッテの片頬を摘まんで強く捻り、ぐにぃーっと持ち上げた。指先が離れる瞬間に走った鋭い痛みで、うっすら涙が滲む。
「ごめんね」
「……なんでハウィスが謝るの?」
「寂しがり屋なミートリッテが、大好きだから」
頭を軽く抱えられ、頬を摩る手が止まる。
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