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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
6話 浅瀬の槍妃
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挽くような鈍い音が鳴り、半分ほどが開くと自らの重みで床に落ちる。


「やっぱり、ここしかないよな」


 ダンジョンの名前になっているくらいだ。クエストの報酬(リワード品)の在処に妙な捻りを加える余地はもうないだろう。視線の先、石櫃の底には青い鞘の片手剣が眠っていた。
 一応、性能だけを確認させてもらうが、やはり武器としては前線で使うには心許ない数字が散見される。現在装備している《ソロースコール》と比較しても、今一つ及ばないところがある。溜め息を一つ吐き、横からリワード武器――――《クルジーン》に視線を送るグリセルダさんへと実物を差し出す。こうなっては、申し訳ないがグリセルダさんに引き取ってもらった方が有意義に思える。


「………どうしたの? せっかく手に入ったのに」
「使ってくれ。俺が持っても持ち腐れだからな」
「とても嬉しいけれど、私にはコレがあるから」


 しかし、グリセルダさんは苦笑しつつも腰に提げた細い片手剣を見せる。


「そんな貴重な武器を貰うのが怖いから、建前にしかならないかも知れないけれど………この剣はね、旦那が作ってくれた私の宝物なの。だから、私には使えないわ」
「確かに、大切な剣だ。そうした方がいい」


 数値的な性能で言えば、恐らく《クルジーン》が勝るだろう。
 だが、このSAOというゲームにはパラメータで表すことの出来ない力が存在する。データで構成されたこの世界で《人の想い》云々を語るのは迷信に傾倒したような気もするが、でも確かにそれはプレイヤーに影響する。ましてや、リアルでも深い絆で結ばれた相手の鍛えた剣だ。下手なリワード品よりもずっと強くグリセルダさんを守ってくれるに違いない。


「そうすると、これはエギルにでもくれてやるか」
「あ、ちょっと待って!?」


 ストレージに納めようとポップアップ・メニューを操作していると、咄嗟にグリセルダさんが声を張り上げる。言われるままに中断すると、続け様に言葉を繋げる。


「この剣、うちの旦那に装備させてもいいかしら?」
「旦那さんも片手剣士なのか?」
「うん、もうだいぶ圏外には出ていないけれど………でも、私はやっぱり、あの人と一緒に戦いたいの。だから、もし良かったら………その………」


 やはり、貸し借りについては一歩引いてしまうか。
 一つ考えを巡らせ、有用な情報を幾つか洗い出す。ここまで一緒に戦った縁もある。悩んでいる仲間を無下にしようものなら、俺は相棒と保護者に叱られてしまう。


「LA記念だ。やっぱり貰っておいてくれ」
「………い、いいの?」
「もとは俺から譲渡を持ち掛けた剣だ。気が済まないなら、これもあとで埋め合わせしてくれればいいさ」


 有無を言わさぬ勢いで投げ渡
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