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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
6話 浅瀬の槍妃
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攻撃手段ということになるだろうか。
 そして、愚かにも罠に掛かった敵を嘲笑うように、視線の先で勝ち誇ったように目元を笑わせる女王がいる。しかし、自分でも分かるくらいに口角が吊り上がり、槍を構え直す女王に向けて、我ながら獰猛な笑みで零す。


「………それで、俺に勝ったつもりか?」


 俺の発言に反応してか、女王は槍の穂先を僅かに震わせる。それが如何なるアルゴリズムによるものかは知るつもりはないが、しかし、もし言葉の真意を自己判断することが叶ったならば、三連の刺突は意味の薄いものであったと理解することだろう。

 武器によって与えられるダメージはそれぞれ属性が存在する。《斬撃(スラッシュ)》《刺突(スラスト)》《打撃(ブラント)》《貫通(ピアース)》の四種類。片手剣のソードスキルの大多数は斬撃属性に区分されるし、これまで石像相手にめざましい活躍を飾った体術スキルによる拳打や蹴脚は打撃属性に該当する。更に言えば、黒い液体から生じた三本の槍は貫通属性となる。この貫通属性は総じてノックバックに向かないという傾向にある。ソードスキルによる遅延効果のアシストがあれば話は変わってくるが、単純な貫通ダメージにはソードスキルを阻害する効果というものはそれほど高くない。

 故に、スキルアシストの姿なき道筋は、未だ途切れていないことになる。
 薄紅の輝きは最高潮に達し、重量を帯びて加速する刀身は女王に苛烈な傷を刻み付ける。

――――片手剣()四連撃技《ブラッドラスト》

 腰溜めから振られた剣は大振りの弧を描いて女王を垂直に斬り伏せ、刀身を巻き込みながらの二連薙ぎ払い、下段に叩き下ろすような重い刺突で締め括られる高火力連撃。それでも、女王の底意地か、それともただ単に火力不足だったか、僅か数ドットで踏み止まる様には敬意さえ覚える。

 だが、既に勝敗は決してしまった。
 空を切る音に続いて石畳を叩く金属音、それはグリセルダさんが盾を放った音に他ならない。
 踏んだ瞬間に対象を迎撃する黒い水、しかしそれは、プレイヤーが踏み締めた瞬間に牙を剥く代物であったらしい。落下した盾に攻撃を行わないと見極めるより早く、グリセルダさんは安全地帯と自らの盾を足場を駆け抜ける。俊足の迫る音に振り返る間もなく、女王は最期の一撃をその身に受けた。


「………態度は気に入らなかったけど、女の子だもの。顔だけは狙わないであげる」


 肩越しの呟きを聞き、自らの胸の間から延びた白銀の刃に視線を落とした女王は、一度だけ頷くように首を縦に揺らすと、グリセルダさんに身体を預けるように倒れ掛かりつつ眠るように瞳を閉じ、足下に広がる《浅瀬》と共に消滅する。
 訪れた静寂を破るように鳴り響いたリザルトウインドウの出現に伴って、ネームドボスとの戦い
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