第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
6話 浅瀬の槍妃
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ただろうか。だが、記憶を精査する時間も碌に与えられず、至近距離での戦闘から離脱した女王は槍の石突を床に打ち付けた。
そして間もなく、女王の足元から噴き出した黒い液体が飛び散る。それは、先のカラティンに似た印象を受ける。それ自体は石畳に撒かれただけで動くようなことはないのだが、見た目だけでなく性質まで似通った、あるいは同質というならば、この液体は毒性を備えている。だとすれば地形ダメージ系か。
カラティンのランダムな取り巻き生成やカウンターといい、女王の地形ダメージといい、PT向けの難易度でありながらも人数を多めにして挑むと痛い目を見る構成はまったく厭らしい。とにかく、女王を中心に発生した液体はバケツから水を零した痕のように、中央に向かうほどに密度を増す。加えて自身は水場の中央から微動だにせず、ひたすらに待ち構えている。
《Madb The Shoal Queen》――――浅瀬の女王とは、言い得て妙ということか。
だが、耐毒スキルのおかげで俺はある程度は強気に攻め込むことが出来るが、グリセルダさんには荷の重い難所となろう。大事をとって、この辺りで戦線から外れてもらうとしよう。
緩やかに槍を携える女王の周囲を見渡し、地面を蹴って水場へと踏み込む。
ただし、黒い液体は極力踏まずに、未だ乾いた石の面を晒す箇所を飛び石に突き進む。液体という不定形の特性上、空気中に飛散した際は塊で居ることは出来ない。空気を受けた部分は帆のように膜を広げては弾け、或いは飛沫となって飛び散る。液量が多ければ範囲内の全てを覆うことは叶っただろうが、足場が残っていることこそ最大の救いだ。多少の距離も《軽業》スキルの恩恵で難なく飛び越えられる。故に利用しない手はない。
一歩、二歩、やや長めの跳躍で三歩、続く四歩目は女王を剣の届く間合いに捉える。
迎撃に動いた女王の槍も穂先を蹴りつけて弾き、《武器落とし》とまではいかなかったが、確実に怯んでいるのが見て取れる。十分過ぎる隙だ。これならば最大火力のソードスキルを使ってもお釣りがくる。黒い液体を踏み締めた足を肩幅に、予備動作を完成させ、薄紅のライトエフェクトに輝く刀身を女王の瞳越しに見遣る。
――――だが、どうも俺は目算を見誤ったらしい。
「ぬ、ぅおぁ!?」
突き出される、三本の杭。或いは槍にも見えようか。
両脚を衝き穿つ害意は、認識の外側――――足下に広がる黒い液体から不意を突出したものだ。
カラティンの特性、女王の状態異常付与。黒い液体と両名に連想する共通項から導き出した共通項は、結果としてミスリード。答えはカラティンの《攻撃被弾時に発動するカウンター》を《領域進入時のトラップ》へと変更して流用したフィールドギミック型の
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