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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
6話 浅瀬の槍妃
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《攻撃面》の強化は望めないだろう。
 すると、ほぼ裸体に近い女王が鎧を纏うか、乃至は他の手段を以て防御力を跳ね上げるのだろうか。《防御面》での強化。その公算が高く思えてならない。
 だとしたら、無敵モーションは確実に発生する。ステータス変動系の変化は、極めて高い頻度で無敵時間が設定されていた。ボスの強化前に畳み掛けられるという事態を防ぐために講じられたギミックなのだろうが、俺としては《変身前に倒せるに越したことはない》というスタンスの為に、その現象に幾度となく煮え湯を飲まされたものだ。結果的には撃破するのだが。


「来るわよ!」


 グリセルダさんの叫びが空気を裂き、同時に乱戦から遠ざかるように左方へと駆けた。
 女王については、そんなグリセルダさんを捨て置くように猛然と俺に向かってくる。女王自身も、彼女からはAGI型の素早く冴えのある連撃ソードスキルを幾度となく浴びたのだが、どうもこのボスのヘイト算出判定は特殊らしく、通常の《攻撃によるダメージや手数》によるダメージ重視型ではないらしい。最もレベルの高いプレイヤーを狙ってくるのだとしたらヘイト管理は極めて楽なのだが、真相はもっと別の場所にあると見た方が賢明だろう。とはいえ、俺からしてみれば願ったり叶ったりだ。

 突きを手刀で撃ち払い、踏み込みと同時に愛剣で斬り上げる。
 しかし、槍を流された時点で後退を決めた女王には直撃に至らず、脇腹を僅かに掠めた程度。手の甲に残るダメージエフェクトを見遣り、痛み分けとなることを悟ると、女王はようやく不敵な笑みを目元に浮かべた………気がした。


「………いい気になりやがって。お互い、ここからが本番だろう」
「………………………フッ」


 呼気とも、薄笑いとも取れない、でもどこか強い何かを秘めたそれを返答として、再び剣と槍が切り結ぶ。心なしか更に速度の増した女王の槍と激突する幾合もの剣戟。金属同士の凌ぎ合いが織りなす清澄な快音は涼やかなれど、命を賭した戦いに感傷を持ち込む気など毛頭ないのも事実。乾坤一擲、懐へと踏み込む。


「シェアァ!」


 鋭い斬り上げが胴を捉えたのも気に止めず、引き絞った掌底――――体術スキル重攻撃技《裂衝》が女王を撃ち貫く。
 右の肺腑を穿った、実体のない衝撃の刃に苦悶を零すように()せながら、たまらず退散する女王とグリセルダさんが交錯し、その背中に《ソニックリープ》でコンパクトにダメージを刻む。これで女王はバーの半分を微かに下回る。


「そろそろか」
「………知らないわよ。そんなの」
「………怒ってます?」
「知りません。理由は自分で考えなさい!」


 何故か素っ気ない、むしろ冷たいくらいに刺々しいグリセルダさんの声が痛い。何か気に障るような真似をしてしまっ
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