5部分:第五章
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第五章
「私ずっとこっちですよ」
「そうだったかな」
「はい、そうですよ」
「まあそうだね」
丈は彼女の話を聞いてとりあえずといった感じでだ。
また納得した顔になりだ。頷いてだ。
それでだ。今度は左右を見ることなくだ。公園に案内された。
そして公園に着く。ジャングルジムに滑り台、ブランコに砂場があるごく普通の公園だ。だが今は遊ぶ子供達もその子供達を見守る親達もいない。
そんな寂しい中でだ。丈は。
今度は左を見た。そこに彼女がいた。
その彼女にだ。こう言ったのだった。
「それで亜実と真実だけれど」
「はい、今来ると思います」
「いや、来るんじゃなくて」
ここでだ。彼は。
楽しげな笑みを浮かべてだ。こう告げたのだった。
「もう来てるんじゃないかな」
「あれっ、そうですか?」
「そう。それも二人共ね」
そうではないかとだ。彼女に言うのである。
「来ているんじゃないかな」
「あれっ、そうですか?」
真実は兄の言葉を受けて公園を見回す。亜実が隠れている木陰以外には人はいない。亜実が木陰に隠れていることも知っているのは真実だけだ。
その筈だった。しかしだ。
ここでだ。丈は言った。
「ねえ真実」
「えっ!?」
「亜実もさ」
今度はその木陰を見ての言葉だった。
「何の用かな」
「えっ、私は」
「だから。今俺の目の前にいるのが真実で」
こうだ。その派手な女の子を見てにこりとして言ってだ。
「木陰に隠れてるのが亜実だよね」
「えっ、私達は別に」
「ほら、私達って言ったね」
その言葉は失策だった。そしてその失策をだ。
丈は見逃さなかった。それでだ。
さながら野村克也が相手チームのエラーを見逃さないのと同じでだ。彼は一気に攻めた。そして亜実と真実はというと。
亜実は木陰で慌ててしまいだ。つい姿を出してしまった。真実もだ。
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