精神の奥底
56 嵐の予感
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ったのだろうか。
きっと少年にとっては死んだ方がマシに思えるような体験だったに違いない。
もう想像するのも悔しくて、辛くなってしまう。
これこそがミツバの様子がおかしかった最大の理由だったのだと、シドウは悟った。
もちろん、今までのバラバラ死体の写真だけでも気分を害するには十分なものだろうが、子供が好きなミツバがこれだけ酷いことをされていた少年の心中を察すれば当然の反応だった。
「うん、酷い。酷すぎる。Valkyrieも被害者たちも」
「仮にシンクロナイザーが犯人だったとしても、年齢的には刑事未成年。その上、戸籍も無い法律上存在しない人間。きっと起訴も裁判も成立せず、裁きを受けることはない。だがそれが不思議とラッキーに思えちまうよ」
「私さ、子供ってのはさ、いろんな可能性と未来を持った宝物だと思ってたよ。みんなどんな振る舞いをしても、心の中は純粋だって。でも…この被害にあったクズたちの味方にはどうしてもなれない。可哀想だ!って気持ちが湧いてこない」
ミツバは悔しそうな顔をして、思わずテーブルを叩いた。
「ちなみに事件の1週間そこら前にシンクロナイザーと一緒に襲われたっていう少女は?」
「えっと…アレ?」
「どうした?」
「被害にあったのは『高垣美弥』、この子、高垣美緒の娘だ!」
「なんだって!?」
「意識不明の重体で湾岸病院に緊急搬送されてる。クラス委員で成績優秀、それに…」
「ん?」
「数年前にイジメに遭って、死にかけてた経験があるみたい。その時に大規模な手術を受けて、奇跡的な回復をしたらしいんだけど、そのせいで長時間の手術ができず、今回は本当にマズいらしい」
「なるほど…条件が揃ったな。完璧だ」
「どったの?」
シドウは怒っているような笑っているような形容しがたい顔をして、声を上げた。
「自分がここまで凄惨なイジメを受けて、助けてくれた友達まで傷つけられて、その原因を作った武器を売った組織の幹部がその母親で?その上、ガキ共は反省するどころか調子に乗り、母親と組織は娘が死にかけてるっていうのに武器を売り続ける。これだけの条件が揃えば、どんなに優しく純粋な心を持った奴でもおかしくなるさ」
「……」
「ずっと考えてたんだ。あのシンクロナイザーがどうしてここまで?ってな。あいつは口数は少ないし、積極的にコミュニケーションを取るようなタイプでもないが、本当は明るくて、優しくて、純粋な奴だ。学校であいつがスターダストだって知って、今までのデンサン港やプライムタウンでの事件の犯人があいつなんじゃないかって思い始めたあたりから、さっきお前の情報でほとんど確定してからも、どうしても腑に落ちなかった」
「私だって、未だに信じらないよ…」
「仮にシンクロナイザーがスターダストだということを知らなくても、その行
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