精神の奥底
56 嵐の予感
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シドウは両手に弁当や菓子、飲料の詰まったビニール袋を両手に抱えて、例のカビ臭いビルの階段を登っていく。
ツンと鼻を突く匂いに顔を歪ませながらも、時刻も昼に近づき、徐々に客足が増え始めていることに驚いていた。
本物のマニアであれば、このような劣悪な環境であっても、モノがあれば気にすること無く足を運ぶということを思い知り、彼らの必死に商品を眺める様子にある種の敬意を払いながら、奥へ奥へと進んでいく。
そんな中、相変わらず客のいない店のドアを開いた。
「調子はどうだ?」
「!?…あぁ、おかえり。ホントにちょうど1時間で帰ってきた。おぉ、こんなにいろいろ買ってきてくれたんだ」
畳間にゴロンと横になって、冷房から放たれる冷気で涼んでいた“シャムロック”ことミツバはTISSOT・LADY 80 Automaticが示すシドウの行動の正確さに少し驚きつつ、起き上がった。
「ハロ〜お茶もらうね」
「お前…ちゃんと調べてたんだろうな?」
「モッチー、だけど調べたものの…分からないことだらけって感じ。あくまで私に集められるのはデータだけだから」
「じゃあ、とりあえず分かったことだけ報告」
「いいけど…見てて正直、胸くそ悪い話だお?」
先程のようにスラング混じりの軽めの口調なのは変わらないが、何というか元気が無い。
それは冷蔵庫に買ってきた食料を入れながら、顔を見ずとも分かることだ。
確かにシドウが調査を依頼した事件は新聞で読むだけでも気分を害するものだが、ここまでの変化があるとは思わなかった。
ミツバは少しため息をつきながらPCの前に座る。
「どれからにする? Valkyrie?バラバラ殺人?」
「Valkyrie」
「りょ。Valkyrieは約1ヶ月前にこの国に入り、3週間前にデンサンシティに。それから銃器、ユナイトカード、ダークチップなんかの武器の売買を始めてる」
「買ってるのは、どんな連中だ?」
「これに関しては、正確には分からない。だから少し想像も混じるけど、買ったブツを所持してて捕まった連中のデータからすると…多分、組員やらそれを騙るチンピラ。でも割合的に一番を多いのは学生の不良たちだ。捕まった連中の約3割半が高校生、2割半が中学生だ。大学生が1割」
「約7割が学生…」
「もちろん大人の方が悪知恵が効く分、まだ捕まってない奴も多いから、一概には言えないけど、そこまで大きくは変わらないと思う。こんな感じで推測も交えながらでないと、うまく分からない部分もあるから、主観とか混じるけどおk?」
「あぁ」
「それでご存知の通り、武器を使った犯罪がここ数日で多発、警察はお祭り状態で既に数十名負傷か過労で病院送りになってる。データを見る限りだと数分から数十分置きに事件が起こるから、もう警察は頼れないと割り切るしかな
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