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八神家の養父切嗣
三十四話:話をしよう
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アナでさえ口をつぐむ。人間に代えれば重責は跳ね上がる。命に貴賤はないと言う人間は多くいるが道端の虫を踏みつぶして自首する人間は特定の宗教に属する人間ぐらいなものだろう。

 人間は同族を殺すことをタブーとしてきた生き物だ。それがどういった理屈かは想像するしかないが羊と人間では殺すハードルが上がることだけは確かだ。冷静な数の判断も情に動かされ鈍り始める。はやては更に追い打ちをかける様に条件を追加していく。

「因みに一人はキャロと同じぐらいの女の子な」
「わ、私と同じぐらいですか?」
「そや、さらにさらにその少女は世界を滅ぼしてしまうと評判の爆弾付きや」
「なんですか、そのトンデモ設定は?」

 世界を滅ぼす少女という眉唾物な設定が出てきたことに少しジト目になるティアナ。いくらロストロギアが身近にある世界出身だとしてもキャロぐらいの少女と世界の破滅は結び付けづらい。はやてはそう思うのも無理はないだろうなと苦笑いをしながら頬を掻く。

「私が犠牲になることで世界が救われるなら……」
「ダメだよ、キャロ! そんなの間違ってるよ!」
「あー、あんた達。あくまでもキャロぐらいの年って設定よ。あたしも嫌だけどさ」

 予想以上に感情移入し自分が犠牲になろうとするキャロにそれを止めるエリオ。どこぞの小説でありそうな展開ではあるがあくまでも設定の為にティアナが宥めすかす。その間スバルははやてが何を言おうとしているのかを薄々と感づき始めていた。この話は決して空想のものではないということを。


「少女を犠牲にせんと世界が滅ぶ。それを知った―――その子の父親はどうしたと思う?」


 今度こそ本当に空気が凍り付いた。もし、何も知らない赤の他人ならば割り切って犠牲にすることもできるだろう。だが、自分の家族を、最愛の娘を、世界の為だから死んでくれと割り切れるだろうか。フォワード陣はほとんどが血の繋がった家族を持たぬ者達だ。それ故に家族大切さを他の誰よりも理解している。勿論、それを失った時の想像を絶する絶望も。

「そ、そんなの……悲しすぎますよ。だって、家族ですよね?」
「うん……家族や。誰が何と言おうとも家族や」
「それなのに殺すか殺さないかを選べなんて……できない」
「でもな、選ばんといけんかったんよ。どうしようもなくなってどっちかを選ばんといけんこうなった」

 はやての話し方が変わったことにティアナが感づき驚愕で目を見開く。彼女もまた気づいたのだ。はやての話が架空の話ではなく実際にあったことなのだと。そして、その少女の正体にも薄々と感づき始めていた。

「結論から言うとな。その子の父親は―――娘を捨てて世界を取ったんよ」
「あんまりです……そんなの」

 未だに真実に気付いていないエリオは自分と同じように見捨
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