三十四話:話をしよう
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料理をする時間がもったいなくてついつい余り物やお惣菜で済ませてしてしまうのが主婦の悲しい性なのだ。
「……と、いつまでも立たせ取るのも悪いし座って楽にしてええよ」
「いえ、私達はこのままで大丈夫です」
「そか、それなら部隊長命令や。のんびり座って楽にしなさい」
「しょ、職権乱用……」
「使えるものは何でも使うのが私の主義や。さ、座った、座った」
ニコニコと笑いながら強制的に新人達を楽にさせるはやて。ティアナはその頭に茶色の耳が付いているように錯覚したがそれは気のせいだろうと首を振る。因みにその後タヌキという異名がはやてにつけられていると知った時に妙に納得したらしい。
「さて、何の話をするかは言ってなかったよね」
「はい」
「ほな、今日話すことは基本質問やな。ということでにみんなに一つ質問や」
こんな軽いノリで語っていいものなのだろうかという新人達に語り掛けるはやて。新人達も終始こういったノリで進んでいくのだろうと体の力を抜き聞き入る。だが、今までの空気を根っこから破壊しつくすような爆弾をはやて自身が投下する。
「一匹の羊を犠牲にせんと他の六十億の羊が死ぬ時、みんなはどうする?」
何を言っているのだろうと四人の表情が固まる。特にスバルはあの男との会話を思い出し人形のような死んだ表情になる。そんな様子をはやては笑みを湛えたまま眺める。彼らがどんな答えを出すのかを黙って促す。しかしながら勢いよく答えが返ってくるような質問でもない。しばらくは沈黙が続く。だんだんと気まずさが出始めてきたところで初めにティアナが口を開く。
「一匹を犠牲にします。可愛そうだけど……そうしないと他の六十億が死ぬんならどうしようもないです。でも、他に方法があるのならそれを探します」
「ほー、冷静な判断と優しい心を持ったええ判断やな。キャロとエリオはどうや?」
「私は……出来るなら羊さんを両方助けてあげたいです」
「僕もです」
「うんうん、真っすぐで欲張りな答えでええなぁ。スバルはどう思う?」
質問を振られて俯くスバル。以前なら両方救って見せると豪語しただろう。だが、あの光景を見た後では口が動いてくれない。どうしたいかなど自分でも分からずに頭の中の白紙にペンで書きだしてはぐしゃぐしゃと消して、書きだしては消してを繰り返す。そんなことだから当然のように答えは。
「……分かりません」
「そうか、それならしゃーないなぁ」
答えが返ってこないことも答えだと言わんばかりに満足げにはやては頷く。一体この質問には何の意味があるのだろうかとスバル以外の三人が思い始めたところでスバルが重ねて質問を投げかける。
「じゃあ、さっきの質問の羊を人間に代えて考えてみようか」
その言葉に先程は一番に答えたティ
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