第四章
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「それじゃあね」
「ええ、待ってるわね」
「仕方ないわね」
こうも言いながらもだ、エディタはよしとした。そしてだった。
そのうえで休日を迎えた、その朝に。
見事なプラハ駅の中でだ、夫の手を取ってだった。エディタは彼に言った。
「じゃあ行きましょう」
「うん、今からね」
「モラビアにね」
「そうしようね、ただこの駅にずっといても」
そのプラハ駅の中を見回してだ、アントンはこんなことも言った。
「いいと思うね」
「あなたここに来る度にそう言うわね」
「奇麗だからね」
それでというのだ。
「外から見ても中から見てもね」
「プラハはね」
それこそとだ、エディタも言う。
「何処も奇麗で」
「大図書館もね」
「そしてここもね」
「そうだよね、だからね」
「ずっとここにいてもっていうのね」
「そう思うよ、本当に」
「気持ちはわかるわ、けれどね」
また夫に言った。
「行かないといけないわ」
「うん、もう席の予約も取ってるし」
「行きましょう」
「それじゃあね」
アントンはエディタの言葉に頷いた、そしてだった。
二人でモラビアに行く鉄道に乗った、欧州独特の武骨な感じがしながらもそれでいて芸術的な色彩と外見の鉄道に乗ってだった。二人でモラビアに向かった。
夫の横にいてだ、妻は思わせぶりに笑ってまた言った。
「また言うけれど」
「またっていうと」
「子供をね」
「ああ、また言うんだ」
「欲しいわね」
「だからあと二年」
「まあまあ、多分ね」
思わせぶりな笑みのままだ、妻はまた言った。
「二年と思わなくなるわね」
「どうしてかな」
「人の気持ちは変わるからよ」
あえて多くのことは言わなかった。
「だからよ」
「よくわからないけれど」
「まあとにかくね」
「モラビアだね」
「行きましょう」
こう言ってお茶を濁しもした、とはいっても中で一緒に飲んだのはコーヒーであったが。
モラビア駅からは車だった、それでエディタの故郷の街まで行った。そこに来ると。
まずはエディタの両親が迎えてくれた、それにだった。
彼女の妹達、二人の少女が出て来た。だが。
「あれっ、ルチアは」
「何かね」
エディタが年老いた感じの顔の彼女の母が応えた。
「今お部屋にいるわ」
「自分のお部屋に」
「あんた達が来たって聞いたら」
それでというのだ。
「すぐにお部屋に入ったのよ」
「そうなのね」
そう聞いてだ、エディタは。
確かな笑顔になってだ、こう母に言った。
「わかったわ」
「どうしてそこで笑うの?」
「笑いたいから笑うのよ」
「それを返事って思っていいのかい?」
「ええ、返事よ」
まさにというのだ。
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