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乱世の確率事象改変
理と欲と望みと
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を持ってんだ……お前さんが求めるような医学の知識も少しはある。例えば……目には見えない病気の元の存在とソレへの簡易な対処法、とかな」

 一寸目を見開いた華佗は、食い入るように彼の眼を覗き込む。

「別に情報の対価に交換条件を出すつもりもない。治療の対価ってことで受け取っておいてくれ。詳しくは後で教えよう」

 まずは何をするべきか、彼が示したのはそういうこと。
 あくまで華佗は朱里に頼まれて彼の記憶喪失を治す為に来たのだ。医者として今回の目的を穿き違えてはならない。
 一口緑茶を口に含み、華佗は大きく息を吐き出してから口を開いた。

「荀攸殿から聞いたが、あんたの記憶喪失は外傷的なモノではなくて精神的なモノで間違いない。それなら治療は出来るかもしれない。
 氣を鍼で送り込み、脳髄と魂魄に刺激を与えて本来の記憶を取り戻すきっかけにはなるだろう。あくまで可能性であって確実じゃないのは分かってくれ」

 華佗の説明を聞いて、秋斗の表情が驚きに変わる。

「魂魄への、刺激?」
「ああ、俺のゴッドヴェイドォは鍼と氣による治療なんだ。鍼で人体の治癒力を活性化させることを基礎として、病魔を氣の力で弱体化させることも出来る。
 氣は魂とも繋がりが深い。記憶もそうだ。脳髄にも刻まれるが、魂にも記憶は刻まれると聞いたことがある。だから多分俺の鍼なら、最近戻りかけたと聞くあんたの記憶を戻すきっかけになるかもしれない」

 現代で言えば有り得ない話。しかし氣という概念を凪の技で既に知っていた彼としては、華佗の理論をなるほどと理解するしかない。
 それにだ。
 彼は魂の記憶理論に関して明確に是と答えることが出来る。あの腹黒少女とのやり取りは、間違いなく魂だけでしか行っていなかったから。

「へぇ……んじゃあ、頼んだ。記憶が戻るならなんにでも縋るつもりだったんでね。今更怯えることもない。少ない可能性であっても俺は賭けるよ」
「いや、ダメなんだ」

 突然返されたのは拒否の言。何故か分からずに首を傾げる秋斗の前で、華佗は僅かな恐怖を滲ませて冷や汗を一滴垂らした。

「俺は特殊な目を持ってる。病魔を見抜く目を。人の氣の流れも見抜けるし、“人ならざるモノの氣”も感じ取ることが出来る。だから……この治療が失敗に終わるって、分かった」

 説明されていく言葉の意味は分からない。秋斗は耳を傾けるだけしか出来なかった。
 そんな彼に向けて、華佗はゴクリと生唾を飲み込み……ギシリと歯を噛みならす。

「あんたは……存在自体が異常だ。
 この世界から乖離されそうな魂を無理やり何かの糸で縛り上げ、本来は有り得ない力を鳥の骨のような何かから引き出している。
 人としての魂の在り方じゃない。言うなればあんたの存在は、この世界の理から外れて
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