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異界の王女と人狼の騎士
最終話
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された線、そして頭、胴体、左肩、両足にそれぞれ浮かんでいる死を司る瘤が見える。
 右手をゆっくりと動かす。
 俺の指先が青白く発光するのがわかった。それに呼応するように、漆多の体の瘤も発光し、その存在がはっきりと見える。
 熱くは無い。むしろ凍りつくように冷たい感触が指先に集中する。

「漆多、すまない。先に逝って待っていてくれ。今は逝く事ができないけど、俺もやがては向こうに逝くことになる。その時にお前と寧々には謝らせてくれ、……な」
 それは、本気で言った嘘偽りの無い言葉だった。
「全ては俺が引き受けるから」

「させてたまるかよぉっ」
 漆多は絶叫する。血まみれの左腕を振って、俺の接近を阻止しようとする。その攻撃はあまりに遅く、もはや攻撃とは呼べないものだった。

「俺は負けない。負けるか糞ったれ」
 そう言うなり、自らの左腕を胸に突き刺す!
 吐血し、かすかに呻きながら、その腕を更に更に体の中へと突き入れる。
「うがががががっ!! 」
 抉るような動きを見せる。激痛に悲鳴を上げる漆多。

「何を! 」
 それ以上言葉は出てこない。

 メリメリ
 何かを引きちぎるような音がした。

 そしてアイツは胸に突き入れた手を引き抜いた。左手を俺に向けて突き出す。
 
 そこには、ピンク色の心臓があった。

「ぐう、へへへ、……俺は、お前なんかにやられたりしない。俺は、絶対にお前に負けない。負けちゃいけないんだよ。負けてたまるか、殺されてたまるかっていうんだ。お前に殺されるくらいなら、そんなことになるくらいなら、これだ! くそったれが」
 一瞬、ニヤリと笑ったと思うと、突き出した手で「それ」を握りつぶした。
 プシュ
 音とともに、漆多の拳の間から血しぶきが上がる。
 ぐへっと呻き、そのまま奴は地面に倒れ込んだ。

「う、漆多!! 」
 駆け寄る。

 血だまりが広がっていく。
 漆多伊吹の死を確認した。

 そして空にヒビが入り、その亀裂が次第に全天へと広がっていく。その向こうには、本当の星空が見える。
 この荒涼とした空間にノイズが混じりだし、風に流されるようにその密度を薄くし、やがて消えていく。コンクリート柱の森もゆっくりと消滅していくんだ。
 結界がゆっくりと消失していくんだ。

 漆多を見る。強く握り締めた拳。血がぬるぬると染み出している。
 その指と指の隙間から這い出してきた一本の糸のようなものを見た。

 漆多の体毛ではない、異質なそれ。

 見るとその線にも小さな瘤が見えた。つまりこれは生物だということか。……これが寄生根?
 特に動くわけではなく、ただ漂うだけのような存在。
 その瘤をつまむと、潰した。
 
 それは、崩れるように消えていっ
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