第八十三話
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物も、邪魔になる岩も礫も、すべてが無意味な存在となる。
すべての存在をすり抜けて俺は駆ける。
なんだ? なんだ?
思考が追いつかない。
疾走する俺、俺、俺。
漆多は全速力で走っているはずなのに、これまでの攻撃と比べ物にならないほどの【この世界の速度という概念】を超越した高速で加速しつづけているはずなのに、俺にとっては、まるでそれが停止しているかのように、ごくごく緩慢に動いているようにしか見えない。
摂理概念崩壊。
むしろ、俺がこの世のあらゆる摂理を越えた世界で動いているかのようだ。
なんなんだ、これは。
「順列置換」
それは時間軸すらをずらしてしまう力。
この世の始まりと終わり、そして結果へといたる経過そのものを、その順序すら消し去ったような動きが俺に宿っているというのか?
こんなの使える存在なんて、俺は「一人」しか知らないぞ。
この能力がホンモノなら、俺は、俺は一体何者なんだ?
俺は奴の死を導く瘤を見て取る。心臓の直ぐ側、そこに漂う大きな鉛色の瘤。それが見える。
それにむけてゆっくりと手を伸ばす。
指先が発光する。
あれに触れれば、指が撫でるだけでもいい。それですべてが終わりだ。
あの瘤を俺が触れ、破壊するだけでいい。
存在の破壊・不可逆の呪い・寛解不可の攻撃。一度破壊されたものはいかなる治癒も再生も不可能となる。この破壊を逃れるためには、新たに作り上げたものを移植する以外は術は無い。
それがすべてを終わらせ、始まりに戻す能力。つまり、この移動速度と絶対破壊の能力は一つのものなんだ……。
漆多の顔を見る。
漆多の眼が俺の指の動きをゆっくりと追っている? ようにみえた。
貌に恐怖が張り付いたような!
アイツには俺の動きが―――
見 え て い る ?
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