第八十話
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「違う! 俺はそんなつもりで言った訳じゃない」
「確かに、直接寧々を殺したのはお前じゃないかもしれない。だけどなあ、俺を裏切った罪、寧々を護れなかったその罪は永遠に消えることは無いんだ。例え、お前が言うこと全てが真実であったとしても、すべてにおいてお前が正しいんだとしても、お前を許すことは出来ない。絶対に絶対にだ。俺はどんな事をしても、どんな手段を使ってでもお前を殺すんだ。それが、俺の唯一無二の正義だ。だから、お前はお前のその身勝手な正義を振りかざし、俺を殺しに来ればいい」
この期に及んで俺は絶望を感じていた。
確かに、最初から分かっていたことだし、それを受け入れているつもりだったんだけど、今、目の前にそれを示されるとどうにもならない気持ちだけが俺の心を握りつぶすように圧迫しているのを感じていた。
この先、お互い何を言おうとも、どう言葉を費やしたとしても結論は変わらないことに。
説得など何の意味もなさない。そんな言葉など存在しない。
そして結論づけるしかない。絶望的な解答。
すでに漆多は寄生根に憑かれている。完全に囚われてしまっているんだ。そして、もう……彼は助かることは無い。助けるすべはこの世界に存在しない。
次第に肉体も精神も取り込まれていき、最終的にはその思考すら奪われただのケダモノ以下の存在になってとり殺されしかないんだ。
だから、……俺ができること、それはただ一つしかない。
―――人としての意識があるうちに、親友を解放すること。つまり……殺すことなんだ。
「どうしても、……というのか」
俺は縋るように呟く。
「わかっている……さ」
突然、漆多が呟く。俺は動きを止める。
「お前が必死に寧々を守ったって事は……友達だからな。今その力を得ているから分かるよ。あの時、お前が寧々を守ることができるわけがないことくらい。それでもお前は命がけで戦おうとしたことも知っている。今、俺が感じていることは、ただの嫉妬でしかないことくらい。だけどそれでもお前が憎かったんだ。どうしようもないくらい。寧々が俺ではなく、お前の事を好きだったということを受け入れられるわけがないだろう。だから憎むしかなかったんだ。生きているお前を。そして、俺は力を得た。……暴走。何人もの人間を殺した。もはや戻る事なんてできないんだよ」
「漆多……」
それは彼の本音だったのだろうか?
「だからこそ俺は戦うんだ。お前を殺すために。例え間違っていたとしても、俺はお前を殺さないではいられないんだよ。命をかけてお前を殺す……。それしかないんだ。もはや俺にはその道しか残されていない。好きな女をお前に取られ、彼女が殺されそうになったっていうのに何も気付かず、その時、家でエロ本見てたんだぜ、俺は。寧々が必死に助けを求め
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