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異界の王女と人狼の騎士
第八十話
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今度は大振りな攻撃をしてこない。小刻みな突きを駆使し、時折、意表をついてトリッキーな位置から大技を出すための布石となる攻撃を打ち込もうとする。

 しかし! 今の俺は自らの動きの加速度を3倍速に加速させているんだ。この世界の足場の悪さのせいで、その加速能力の全てを発揮できていないけれど、漆多の繰り出す攻撃はすべて冷静に、かつ、ギリギリのタイミングでもってかわすことができる。こうやってアイツとやり合ってみると、その速度は俺の駆使する能力でいうところの2倍速程度と判定できた。確かにその攻撃の一つ一つの破壊力は尋常でないけれど、交わすこと自体はそれほど難しくはないようだ。……それについては自信がある。
 当たることがなければ、いかに強力な破壊力であろうとも無意味。本来なら、このまま攻撃をかわし続け、漆多を疲労させれ、スタミナ切れか集中力を途切れさせてミスを引き出すことができたなら、致命的な攻撃を与えるチャンスがある。

 さらに―――今回の戦いにおける現状の分析。冷静に。今度はこちらの攻撃について。

 逆にこちらが力押し(加速度をさらに高めての)をしたとしても、漆多、いや奴の中にある寄生根は俺と過去二度戦っているから、嫌というほど知っている。俺の攻撃の漆多にもたらす致命的な威力を。だから、アイツの繰り出してくる攻撃のすべては、その事を警戒しながらのものであることは間違いない。つまり、奴は自身の体の中を浮遊する瘤を俺に攻撃されることを警戒すること、回避することを最優先としている。そうそう俺の攻撃を当てるようなヘマはしないだろう。
 よって時々、カウンターで攻撃をする方法でなければ、攻撃をヒットさせることはできないだろう。そして、そのカウンター攻撃も漆多にとっては織り込みずみだろうから、やはりヒットさせることは困難。

 つまり―――。

 戦いは長期戦の様相を見せ始めたのか? 

 ……俺がそう考えた時、ふいに漆多は攻撃をやめると同時に、後へ飛び退いた。
 わずかに息を切らせている。
「糞ぅう。……このままではいつまでやっても勝てないということか?? これほどまで有利な状況に持ち込んでいるというのに。これが能力差って言う奴なのか? 想いだけではどうにもならないっていうのか」
 唐突に感情を吐露する。
 つまり、奴も同じように焦っているんだ。

 確かに、俺は漆多の創り出した固有結界の中に取り込まれ、王女からの魔力供給を失っている。逆にアイツはこの地の地脈の力をずっと供給されるから全力で戦っても力尽きることは無いだろうし、仮に再生という能力が奴にあるとしたなら、俺の通常攻撃をいくら受けたとしても直ぐに回復するのだろう。
 俺の【不可逆な破壊】による攻撃以外はすべて。
 逆に俺は通常よりも3倍の力を使用せざるを得ない状況。…
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