第七十九話
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閃光が起こった。
俺は思わず眼を閉じてしまったんだ。
―――そして。
俺は、ゆっくりと眼を開けた。
そして、呆然とした。
周囲の光景が、根本的な変貌を遂げていたんだ。
先ほどまであった付近の緑色の木々や、少し向こうに見えたバラの花園。奥の方にあった巨大な温室。
のどかな風景が全てが消えていた。
今そこにあるのは、空虚な地平が遥か向こうまで広がり、大小様々な岩や石くれが転がる荒れ果てた黒い大地。
そして、こんな世界には異質としか思えないコンクリートの無数の柱が地面に突き立てられた、あり得ない風景だったんだ。
俺は上を見上げる。
呆然とする。
慄然とした。
そこには、二つの月が昇っていたんだ。
それは血を暗示するかのように真っ赤に染まっていた。
「何なんだ……これは」
思わず呻く。これが結界?
しかし、これまでの戦いで見た結界とは全く異質なものだった。これまでは外部からの侵入を防ぐためだけのものだった。しかし、今ここで施術されている結界は根本から何もかもが違う。違いすぎる。
これじゃあ、天地創造じゃないか。さっきまであった植物園の風景がすべて消し飛び、いま眼前に展開される風景は異世界でしかなかった。
幻覚ではないリアルな世界であるとするなら、これが地脈の膨大なエネルギーを得た力による結界の姿なのか……。
いや、これは単なる幻覚だよ。そう自分を納得させようとするけれど、それはあえなく失敗に終わるんだ。
なぜなら俺自身だって能力を発動させている。
俺の眼を誤魔化すことなんて出来ないんだから。
だから……これは現実なんだ。
この世界は、悪夢のような光景だけれど、現実なんだ。
だったら話は早い。これから行うことは、たった一つしかないんだから。
世界がどのように変容したとしても、何も変わることは無いんだ。
「漆多、出てこいよ」
姿は見えないけれど、この殺伐とした世界のどこかに漆多は隠れている。
「ずっと隠れているつもりなのか? お前に呼ばれたから来たんだ。さっさと顔を出せよ」
しばしの沈黙……。
「一人で来たのか……」
声がした方を見ると、そこには学ランを着た漆多が立っていた。ショッピングセンターの時と全く変わらぬ姿
だった。服だけは着替えたのか。
そして俺と、その周囲を見回す。
「あの、偉そうなガキを連れて来なかったのか」
「今日は俺とお前だけの話だから、連れてこなかった。彼女には無関係の事だからね」
「ひゅううっ」
妙な声を上げて俺を見る。ニヤニヤと笑ったかと思うと、
「ガキを連れてこないなんて、戦いを放棄でもしたのか? 月人」
と、馬鹿にしたよ
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