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大刃少女と禍風の槍
十二節・寄り道から出会う “体術” 使い
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 オマケに此処はまだ第二層。更に素手スキルの会得者など、当然ながらまだ存在しない。

 正確さと速さから生まれる破壊力に、スキル補正無しで其れを不格好にならず、いっそ滑らかに行って見せるプレイヤースキル。
 改めて目撃したキリトも、百聞は一見に如かずで目の当たりにしたアルゴも……その化け物ぶりに開いた口が塞がらなくなっていた。


「ん? おぉキリトの坊主に……そっちはアルゴの嬢ちゃんか。どうした? こんな所で」


 グザが自分から声を掛け、漸く二人は我に返る。


「グ、グザ……お前今、《体術》取得クエストの最中なのか?」
「あぁよ、あっちに髭面の爺ちゃんが居るから話聞いてきな」


 言いながらグザは少々左腕を高めに掲げると、岩を二回連続で殴って見せる。

 引き攣った笑みを浮かべるキリトの様子からして、グザが口にした通り理解は出来ているだろうが、それでも一応素手で岩を割ろうとしている事を教える為だ。


「じゃ、じゃあ言ってくる」


 アルゴをその場に置いて、グザの指差した方へ歩いて行くキリトを二人して見送った後、アルゴが未だ驚きの抜けない声色で話しかけてきた。


「……ホント、百聞は一見に如かずとは良く言うもんだネ。あんな事するにハ……現実でもブレイクダンスや格闘技やってなきゃ、まず無理だと思うけどナァ?」
「ヒヒハハハ……そりゃどうかねぇ? 持って生まれた才能かもしれんわな」


 アルゴとて、たったコレだけやり取りで情報を聞きだせるとは到底思っておらず、しかしこれ以上質問を続けても同じような返答が返ってくるだけと悟ったか、それとも今の所は引き下がると言う示しなのか、肩をすくめて薄笑いを浮かべる。

 されどまだ話したい事はあるのか、代わりの話題を持ち出してくる。


「そういえバ……アンタはこのクエストをどうやって知ったんダ? 攻略本には乗せてなかった筈だし、まだ出してすらいないんだガ」
「何の意図もねーやね。所謂、偶々って奴なのよ」
「ヘェ、運良くカ」


 此処で嘘をつくメリットもないからとグザは素直に答え、アルゴもまた同じ考えなのか詮索はせず頷いた。


「オイラの見立てだとこの《体術》スキルは『素手で攻撃できるようになる』スキルだと思うんダ。さっきみたいな事が出来るならピッタリのスキルかモナ」
「そりゃーどうかねぇ?」


 会話の途中途中で岩へ向け裏拳やストレートパンチの打ち込みを挟み、後ろ回し蹴りなども決め、何時の間に咥え直したブルーベリー色のパイプから煙を吹かしつつ、意味深長な笑みで彼女の言葉に答える。

 何が言いたいのか理解できなかったのか首を傾げるアルゴへ、グザはコレもまた秘匿する事でもないからと説明した。



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