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大刃少女と禍風の槍
十二節・寄り道から出会う “体術” 使い
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、なにより骨折り損のくたびれ儲けは御免だと、グザはそのNPCに近寄っていく。


「あ〜、ちょっとスンマセン」
「む……入門希望者かの?」


 行き成りそんな問いを投げかけられ、如何答えるべきか迷ったグザだが、此処は素直に頷いておく事にした。


「ああ、そうさね」
「本当に良いのかのぉ……修行の道は長くも、険しいのだが?」
「大丈夫だわな」
「フォフォフォ、気概のある青年じゃ。ならば良いじゃろう」


 そう老人が言い放った途端頭上の『?』は『!』マークへと変わり、グザの視界左端にクエスト受領ログが現れ更新された事を告げる。


「御主にやってもらうのは、ここ等一帯に転がるがっとるその岩を砕く事じゃ……ただし―――」


 言いきる前に老人の姿が夢幻の如く掻き消えたかと思うと、唐突に疾風が吹きすさびグザの横を通り抜けて行く。


「うおっ?」
「己の肉体一つで割ってもらおう……つまり、コレは無用の長物じゃ」


 何時の間にやら老人は後方に移動しており、その手にはグザの相棒であるレア物の両手槍が握られていた。

 現実ならいざ知らず……此処はゲームの中。
 横を掠め通るのではなく、本当にワープして自然と手から武器が離れる設定には、流石にグザも抗えない。


「この試練を徒手空拳で果たし切り、岩を見事割った時……お主は我が秘技たる『体術』を授かるじゃろう」
「へぇ……体術かい」


 恐らくそれはスキルの一種なのだろう。それぐらいなら、幾らこの手のゲームに疎いグザとて理解出来た。
 スキルの名前からして、動作そのものに補正が掛るのか、それとも武器無しで攻撃できるのか……この二つが妥当なところだろう。

 さてどの岩を割ってやろうか、とグザが辺りを見回し始める。
 だが老人NPCの話はまだ終わっておらず、ピンと指を一つ立てて最後の忠告らしき言葉を発した。


「最後に一つ……この岩を割るまで山を降りることは罷りならんぞ? その為の誓いを立てて貰おう」
「誓い? ……ってノワッ!」


 珍しく声を上げてグザが驚いた理由――――それは老人が何処からともなく筆を取り出し、行き成り高速でグザの顔に墨を塗りたくったからだった。
 その所為でグザの顔には鼠の様な、余りにも不格好な黒線が幾本も書かれてしまう。

 ……しまっているのだが、元からある刺青の所為で精々 “何か単調なのが増えた” ぐらいしか分からず、大して変っていなかった。

 初見であろうとなかろうと、違和感すら感じないだろう。
 ある意味グザはラッキーなのかもしれない。


「その証は岩を割り、修業を終えるまで決して消える事はない。心してかかるが良い……我が弟子よ」
(言うのがおっそいね
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