十二節・寄り道から出会う “体術” 使い
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、なにより骨折り損のくたびれ儲けは御免だと、グザはそのNPCに近寄っていく。
「あ〜、ちょっとスンマセン」
「む……入門希望者かの?」
行き成りそんな問いを投げかけられ、如何答えるべきか迷ったグザだが、此処は素直に頷いておく事にした。
「ああ、そうさね」
「本当に良いのかのぉ……修行の道は長くも、険しいのだが?」
「大丈夫だわな」
「フォフォフォ、気概のある青年じゃ。ならば良いじゃろう」
そう老人が言い放った途端頭上の『?』は『!』マークへと変わり、グザの視界左端にクエスト受領ログが現れ更新された事を告げる。
「御主にやってもらうのは、ここ等一帯に転がるがっとるその岩を砕く事じゃ……ただし―――」
言いきる前に老人の姿が夢幻の如く掻き消えたかと思うと、唐突に疾風が吹きすさびグザの横を通り抜けて行く。
「うおっ?」
「己の肉体一つで割ってもらおう……つまり、コレは無用の長物じゃ」
何時の間にやら老人は後方に移動しており、その手にはグザの相棒であるレア物の両手槍が握られていた。
現実ならいざ知らず……此処はゲームの中。
横を掠め通るのではなく、本当にワープして自然と手から武器が離れる設定には、流石にグザも抗えない。
「この試練を徒手空拳で果たし切り、岩を見事割った時……お主は我が秘技たる『体術』を授かるじゃろう」
「へぇ……体術かい」
恐らくそれはスキルの一種なのだろう。それぐらいなら、幾らこの手のゲームに疎いグザとて理解出来た。
スキルの名前からして、動作そのものに補正が掛るのか、それとも武器無しで攻撃できるのか……この二つが妥当なところだろう。
さてどの岩を割ってやろうか、とグザが辺りを見回し始める。
だが老人NPCの話はまだ終わっておらず、ピンと指を一つ立てて最後の忠告らしき言葉を発した。
「最後に一つ……この岩を割るまで山を降りることは罷りならんぞ? その為の誓いを立てて貰おう」
「誓い? ……ってノワッ!」
珍しく声を上げてグザが驚いた理由――――それは老人が何処からともなく筆を取り出し、行き成り高速でグザの顔に墨を塗りたくったからだった。
その所為でグザの顔には鼠の様な、余りにも不格好な黒線が幾本も書かれてしまう。
……しまっているのだが、元からある刺青の所為で精々 “何か単調なのが増えた” ぐらいしか分からず、大して変っていなかった。
初見であろうとなかろうと、違和感すら感じないだろう。
ある意味グザはラッキーなのかもしれない。
「その証は岩を割り、修業を終えるまで決して消える事はない。心してかかるが良い……我が弟子よ」
(言うのがおっそいね
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ