十二節・寄り道から出会う “体術” 使い
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POP率が異様に少なく……その結果なのか、十数分後には道中それ以上特にモンスターとも出会わずに、目的地近くの麓へすんなりと到着出来ていた。
パッと見、今までの林道エリアの様な申し訳程度に容易された道も無く、荒れ放題では有るが獣道も見当たらない。
「……力付くで行ってやるか」
パイプを一旦口から放して煙を吐き、またも咥えてからグザは背の低い草を踏み越え、鬱蒼とした森の中へ足を踏み入れて行った。
現実ではさも、猛獣が木陰からヌッと姿を現しそうな森林でも、ゲームの中という環境な為に大型の虫一匹すら姿を現さない。
ただ何処からともなく猛禽の鳴き声が聞こえるのと、グザが背の高い草をかき分けて強引に進んでいく際にガサガサと鳴るぐらいで、警戒すべき目立った音は空耳ですら聞こえてこない。
相変わらず口にお気に入りであるブルーベリー色のパイプを咥え、濃い青色の煙を吹き出しながら、現実ではまず山林には不向きであろう……しかし刺青と黒肌で雰囲気的にはこの場に酷く似合う、ほぼほぼ半裸な格好でズンズン歩いて行く。
そうして道なき道を行き、邪魔な障害物を力技で除けつつ進んでいくことニ十分程。
「お、開けたねぇ」
一体何処にこんな場所があったのかと、そう疑問に思うぐらいの広さを持つ空き地がグザの目の前に現れる。
崖の傍に位置する其処は草木が一本もなく、代わりに丸く大きな岩が幾つも転がっている。
やはりと言うべきか此処も山の一つでは有るので、視線の位置を変えれば遠くにテーブルマウンテンが幾つか見えた。
其処に辿り着いたグザは小さな岩に腰かけ、景色を眺めながらゆっくりとパイプを吸い始める。
グザが居る場所はエリアの端っこではなく中央に近い部分であり、踏み込んだ瞬間に何かしらのイベントがある可能性が、この時点である程度否定出来る。
更に、どうも安全地帯の一つらしくモンスターが湧出する兆候はない。
骨折り損のくたびれ儲けかと、グザは珍しくうっとおしそうな顔で頭を掻いている。
そのまま欠伸をしつつ立ち上がると、腰に手を当て大きく仰け反った。
「……あ、居た」
そこで漸く、逆さに映るNPCらしき人影を見つけた。
岩がゴロゴロ立ち並ぶ所為で、グザからは死角になっていたらしい。
近寄ってみればそれは、古びた胴衣を着込んだ顎髭が長く堀の深い禿頭の老人で、また髭はおろか眉すら毛深く目が窺えない。
頭の上には金色の『?』マークが浮かんでおり、それがイベント発生フラグを持ったNPCを現すモノだと言うことぐらい、グザでも普通に知っていた。
何かしらのクエストを任されるのか、それともまた別の続き物なのか……偶然とはいえ折角見つけたのだし
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