十一節・ほんの僅かな暗雲
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……この発言からするに、憶測は案外事実なのかもしれない。
頭を振ってネガティブな考えを彼なりに追い出したらしいキリトは、遠くに広がるテーブルマウンテンの群と、一番はじからでも容易に確認出来るほどに高い、フロアを縦に貫く迷宮区の塔を目に映す。
丁度夕日が差し込んでいる事もあって、中々に幻想的な風景を作り出していた。
此処から第二層の主街区は一応確認でき、後は《転移門》に触れさえすれば……それだけで、その《転移門》を経由して一層と二層が繋がるのだ。
仮に何もしなくとも、ボス撃破の二時間後には自動で《開門》される為、万が一開かないという事はあり得ない。
それにボス撃破後しばらくはモンスターMobのPOP率が大幅に下がるので、疲れている所にとどめを刺される可能性もぐっと低くなるのだ。
だからこそ余り気にしなくて良い為か、それとも静かに見れる今を大事にしておきたいのか――――暫くの間、キリトは風が吹き抜ける草原で黄金色の光を浴び、遠くを哀しげに見つめていた。
「エギルさんから伝言よ」
「ぃっ!?」
と―――――突如として聞こえてきた予想外の女声に、大きく肩をびくつかせた。
まあ……女声を発せるプレイヤーなど、攻略集団の中では一人しか居ないのだが……。
「ア、アスナか……それで、伝言て?」
「『また一緒にボス戦をやろう』……ですって。あとキバオウさんからも預かってるわ」
「えっ……!?」
キリトとしても思わぬ人物だったか、数分前のアスナの如くキョトンとした表情を見せてしまう。
それに若干噴き出しながら、アスナは一つ咳払いをかまし、キバオウの口調を真似て言う。
「『今日は助けて貰たけど、やっぱりジブンの事は認められへん。ワイはワイのやり方でクリアを目指す』……らしいわ」
「そう……か」
暫くキリトはその言葉をかみしめ、反芻するかのように黙りこくる。
隣と景色を交互に忙しなく見つつ、キリトは何やら言いだそうとしているらしく、顎に手を当てたり離したりを繰り返す。
「えーと……さっきは、その……ゴメ―――」
「ごめんなさい」
被せ気味に謝罪を遮られたキリトは、またも呆けた顔をアスナへ向けてしまった。
「私があんな事言った所為で、貴方に重荷を背負わせてしまって……」
「い、いや、ボス戦も今も最後は俺が自分で選んだ事だし……それにグザの奮戦もだけど、君の激も合ったからこそ戦線は立て直せたんだ。それにはかなり、感謝してる」
其処で一つだけ拍を置き、キリトは深呼吸の後に微かな狼狽を押し込め、真剣な表情でアスナの方を見る。
「君にはそういった、人の心を一つに出来る力があ
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