十一節・ほんの僅かな暗雲
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言したが最後ベータ上がりだからあんな動きが〜、とか言われたら証拠有無がどうこうの論争になっちまう。例えディアベルを見殺しにするメリットが無い事を解いても……それだけで収まるとは思えんかったしねぇ」
言いながらグザの視線は、最初に叫んだシミター使いの方へ向いている。
彼の怒りがある程度収まらない限りは、感情論と場の雰囲気で強引に否定され、謎の声という不確定要素もあり……ベータテスターとの格差は、立て直し不可能な位置まで落されたかもしれない。
アスナもそれを理解しており、尚更に否定できなかった。
「…………それに―――――が、まだ見逃せねぇ―――のよ。だから――――――で……」
「えっ?」
「や、独り言だわな。独り言」
手をヒラヒラ振りつつニヤリ笑って、何故かアスナから視線を逸らさずそのままパイプを吸い始めたグザに妙な圧力でも感じたか、アスナは自分から目を逸らしてしまった。
そんな彼等を苦笑いして見ながら、エギルは軽く溜息を吐く。
「なあ……一つ、伝言を良いか?」
「伝言ですか?」
「ああ。アイツが悪いと思ってる訳じゃあないんだし……頼めるよな?」
アスナは迷っている、というよりは聊か困っているに近い表情を浮かべながら……それでも断るつもりもないのか微笑に戻り、エギルの方へ振り向く。
「ちょい待ちぃ」
「!」
「……キバオウ……」
そんな彼等を、何時の間にか近寄ってきていたキバオウが止めた。
しかしその顔に非難は宿っておらず……心の中で今思った事を、此処で出すか引っ込めるかで揺れ動いているらしく、気不味い表情がそのかなり微妙な心境を物語っている。
「あ〜……クソ……―――……ッ!」
「……キバオウ、さん?」
「ハァ〜…………ワイからも、頼むわ……伝言」
「えっ?」
頭を書きつつ言い出したその言葉―――それはアスナにとっては思わぬ申し出だったのか、身構えた表情がキョトンとしたものに変わる。
それを見たグザはより一層口角を上げてニヤリと笑い……アスナがバッ、と振り向いた瞬間に元へ戻した。
相変わらずペースを崩さない彼に呆れつつ、アスナはエギルとキバオウの伝言を届けるべく、彼等に先を促した。
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盛り上がりに欠ける多数のプレイヤー達と、一部何やら会話を交わす者達の声が、ざわめきとなって第一層ボスフロアに広がる一方……
「はぁ……」
キリトが立っている、第一層と第二層を繋ぐ階段付近の草原は、いっそ落ち着けないぐらい静かだった。
「まぁ……元より覚悟してた事だしな……気合い入れてかないと……」
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