十一節・ほんの僅かな暗雲
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う事を弁えずにその知識に嫉妬して、今憎悪と共に本音が吐き出されているだけなのか……。
そんな蔑み一色に染まる言葉の嵐の中、キリトの耳へとある一つの、ベータテスターとチーターが不自然に混ざった単語が聞こえた。
「いいな、それ……案外良いじゃないか。ボスのLAと一緒に貰っといてやるよ……その『ビーター』って名前を。今後はぜひともそう呼んでくれ……元ベータテスター如きと一緒にしないでもらおう」
キリトはその単語―――『ビーター』を口にしつつ、LAアイテムであろう黒いコートを身にまとい、集団へ背を向けて、次の階層に続く扉へ歩き出す。
「ま、一応第二層をアクティベートしていてやるけど……ついてくるなら気を付けるんだな。β時代に良く居たんだよ。ボスを折角倒したクセに、次の階層の街道でモンスターに殺されるマヌケがさ……クククっ……」
「ふざけるなッ……謝れよお前! 謝れっ!!」
「……ハハハハハハハ!!」
「ディアベルさんに謝れよっ!? ビータアアァァァッ!!」
シミター使いの叫び声に最早振り向く事も無く、キリトは扉の奥へと消えていく。
地面にへたり込む彼を慰めながら、元・ディアベル隊の面々は事後処理の手伝いも任されていたか、周りへ声を掛け現状確認を行い始める。
そんな中、キリトが去っていた方向を依然として見つめるアスナに、周りに聞こえぬ様声を押さえて掛けられる声があった。
「……アレが本心じゃあ無いことぐらい……」
「……分かってますよ、エギルさん。言われなくても……」
キリトが行った嘲りが―――――しかし偽りの物であったと、この二人は見抜いていた。
憶測となるが……このまま会話を続ければベータテスター全員が疑われる事となり、何より話題に上がったアルゴが尤も危うい立ち位置に陥る羽目にもなってしまう。
当然、ある程度時間が経てば、先の先導文句がどれだけ矛盾しているのか理解も出来るだろうが……されどその間に間違いが起きないとも限らない。
だからこそ他のベータテスター達が吊し上げられるような事態を回避するべく、キリトは敢えて憎悪を己に集める様な真似を行ったのだ。
「……あの様子だと早々にバレると思うがねぇ……あの坊主は意外とお人よしだ。顔にも出やすいから演技なんか向いとらんさね」
見抜いている内の一人らしいグザが、パイプを吸いながら槍で肩を叩きつつ近寄ってくる。
そんな彼にアスナは、『何故あの時発言しなかったのか」と言いたげな、避難の混じる目を向け……グザは早々に読み取ったか、パイプを一旦口から放した。
「確かに言いくるめる事は出来たろうが……何せオレちゃん、ちょいと活躍し過ぎたわな」
「あっ……」
「発
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