十一節・ほんの僅かな暗雲
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い声。
グザを除いた全員が目線を動かし、首を動かし、その声の主を探し始める。
「ハハハハッ! ハハハハハハハ!!」
我慢できないといった様子で、笑い声が遂に高らかに上がった。
――――黒髪の少年、キリトの方から。
「そいつは正真正銘のビギナーだぜ? 何でこの俺と一緒にされなきゃいけない?」
肩に剣を担いであざ笑う様は、間違ってもアスナに仲間意識を抱いている様には欠片も見えない。
「困るんだよなぁ……優等生気取りの細剣使いさん。そう頑張ってもらったらさぁ、コイツらに仲間だと思われるだろ?」
「……」
「お前らもお前らだ……ベータテスター? 情報屋? あんな素人共と一緒くたにされちゃあ、正直虫唾が走るんだよ」
キリトのそのあんまりな物言いに、まだ全体を言いきっていないにもかかわらず、行き場をなくしていた怒りと疑心が……段々と彼の方へ集まる。
「βテスト募集枠は千人……そのたった千人ぽっち中に、本物のMMOゲーマーと言える人間が……一体何人いたと思う? その殆どはレべリングのやり方すら知らない初心者ばかりだったぞ? ……そういや、あたふたする姿は結構笑えたな」
思い出し笑いをしつつ過去の記憶を掘り返し、さも “言葉を選んでいます” といった感じで一拍一拍余分に置きながら、キリトは更に言葉を紡いでいく。
「でもな、俺はそんな連中とは違う……本物さ。なにせ、誰よりも上の階層に登って、誰よりも知識を溜めこんでいる。……じゃ無けりゃあ、《コボルドロード》と真正面からやりあえない」
「……なら、その知識を……」
「勿体ないだろ? まだ必要でもないし、俺だけがより上に行ける確かな命綱だってのに……そうホイホイ話せるもんかよ」
“勿体ない” 。
たかがその程度で知識を詳らかにせず……ディアベルを失うという最悪の結果を作った。
幾ら、知らなかったかもしれないという希望を作っても、当の本人が絶望を語ってしまっては……もう皆が抑えきれる筈もなかった。
「……チーターじゃねえかよ、そんなもん……!」
「最低すぎるぜコイツ……チート野郎にも程がある……!」
「ベータ上がりでチートとかなんだよそれ……」
情報を溜めこむか吐き出すかは本人の自由であり、何よりベータテスターは先にテスト版をプレイしていて、ビギナーよりも情報を持っているというだけ。
故に、チートなどしていないのは自明の理であり……されど、恐らく今この時は、《最低のクズ野郎》を最も顕著に表わす言葉として、今居る人数の殆どをゲーマーが占める彼等が選んだのだろうと推測できた。
もしくは―――ディアベルの生死云々よりも、デスゲームだとい
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