十一節・ほんの僅かな暗雲
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声を上げた。
「ベータ時代の情報はベータテスターだけの物じゃないわ。私たちだって、攻略本から得ていた。ならベータテスターの知識はあの攻略本と一緒……そう差は無かった筈じゃない?」
数十人集まる男達の中で唯一の少女という事もあってか、キリトへと集まっていた不信の目は一旦なりを潜め、問う様な視線がアスナに集まる。
「彼がボスのスキルを知っていたのも……此処よりもっと上で同じスキルを使う敵が出てきていて、そのモンスターを何度も相手取ったからと、そう考えるのが自然でしょう?」
「いいや、違うね」
アスナの弁舌へ更に乗り掛る形で、またも何処からか疑いようもない悪意の含まれた、何処か『何かを』先導する様な声が届いて来る。
「そもそも攻略本の情報が嘘だったんだ。アルゴとかいう情報屋と、其処のベータテスターはグルだったんだよ……それなら、認めたくないが辻褄があう」
「何を………っ!?」
「ベータテスター同士で協力して謀略を広げ、俺らを騙し自分達だけ美味い汁を吸い続ける為にな。……恐ろしい奴等だぜ……コッチは数少ない情報で必死だってのに」
「……っ!!」
コレも冷静に考えれば、数々の矛盾が生じている言葉ばかり
例えば…………今はまだ第一層、言うまでも無く浮遊城の最下層に位置する場所でしかない。
そんなまだまだ先の分からないこんな場所で、周りの人々に信頼されて止まない人物を、間接的とはいえ手にかけた事が知られればその人物はもう終わりだ。
高々『第一層のレアアイテム』取られる事を忌避して命を奪うのは世間体的も、攻略ペースの保持的にも全くもって割に合わない。
オマケにそれで手に入れられるのは、何処まで使えるかも分からないアイテム一つだけ。
装備なら階層の数字が二桁いくまで持つかどうかも分からず、アイテムならピンチに使ってしまうしかないのでその一時しか意味が無い。
何よりベータテスターとビギナーの間には元々軋轢が存在しているのに、そこへハイリスクローリターンの作戦を持ちこむなぞ、不可解且つ愚かの極みな行動だとしか言えない。
何が起こり得るか……それは他ならぬベータテスター本人らが一番よく理解している筈だろうに。
更に言うなら仮に視線を逸らそうと東方西走した所で、手に入れようとして自分で動けば今みたいに怪しまれる事は自明の理だ。
なにせ先程の闘いでキリト以外、刀系スキルの存在も詳細も知らなかったんだから。
何で教えなかった!? ―――とか言われるのは分かり切った事だろう。
それに旨味があると仮定した所で、得するのはキリト一人のみ。
『情報屋』という職業は正確な情報を伝える事が一番大事なポイントで、しかも此処はファンタジー世界じゃ無くゲームの中。
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