十一節・ほんの僅かな暗雲
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シミター使いの男は、間違いなくキリトの方を睨みつけており、肩を震わせ必死に何かを堪えているようにも見える。
彼が誰なのか、如何いった人物なのか、自分に何の関わりがあったか、それをキリトは咄嗟に思いだせずに居たが……次の言葉で理解し、瞬間的に何故叫んだかを悟った。
「何で……何でそいつが湛えられてるんだ!? そいつは、ディアベルさんを見殺しにした張本人なのに!! そいつが知っていた『刀ソードスキル』の事を教えていれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」
シミター使いの言う通り、キリトは《コボルドロード》の刀系スキルを知っており、だからこそ全てパリィして見せていた。
が、頼もしい活躍だと称えられる半面、それは同時にベータテスターである事の露見と、何故持った知識を黙秘していたのかという不信感を生んでしまう結果につながったらしい。
現に周りからも、「そう言えばそうだ……アイツ全部弾いていて……」「攻略本にも書いてなかったのに……なんでだ……?」と、明らかに良くない感情を含んだざわめきが広がっている。
されど……知っての通り、キリトはグザの一言で野太刀に気が付いたのであり、《コボルドロード》が刀系ソードスキルを使ってくるなど、予想すらしていなかった。
刀身のディティールをじかに見るその時まで、タルワールを使ってくると思い込んでいたのだから。
更に言うならあの時は相当切羽詰まった局面であり、キリトが留める前にディアベルが走り出してしまっていた為、ディアベルに刀系スキルの基礎を教える時間など、ほぼ用意されていなかった事は明白な筈。
恐らく詳細を考えるその前に、感情が先走り糾弾してしまったのだろうが……彼の一言が生んだ不信は、確実に漂い立ちこめてしまっていた。
「LAだ」
その黒い雲を…………更に濃くする言葉が投げ掛けられる。
「あんたはLAをディアベルさんに取られるのが嫌だったんだろう? だから敢えて情報を伏せてディアベルさんを見殺しにしたんだ―――――図星だよな、“ベータテスター” 」
何処からともなく響く声で、湧いて出た疑いの感情は更に色濃くなっていく。
なによりキリトが何も言わない事と、彼がベータテスターなのだとそう確信付けられてしまったせいで、『LAの為にディアベルを見殺しにした』という理由の不自然さに気が付けない。
エギルはどう養護したらいいか分からないといった顔で立ち尽くし、キバオウは意外にも罵声を浴びせず難しい顔で黙り……グザは俯いたまま静かに息を潜めている。
「まって、それはおかしいわ」
ここで、今まで戸惑い悩み、踏み出しあぐねていたアスナが
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