十一節・ほんの僅かな暗雲
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ると、俺は思ってる。そりゃ空気に罅を入れたのはグザだろうけど……最後に纏めたのはアスナ、君だ。だから、誰かにギルドに誘われたら絶対に断らない方が良い。攻略への貢献度合いの問題だけじゃなくて……ソロプレイには絶対的な限界があるから」
「……そう」
否定も拒否もせずに、アスナは一言だけ呟き、ゆっくりと頷いた。
かと思うと行き成り、キリトへ一歩詰め寄って訝しげな表情をする。
「それよりも一つ、疑問があるんですけど?」
「な、何だ? アスナ」
「それよ」
「え?」
「さっき 『アスナ』 って私の事呼んだじゃない……今だけじゃないわ、ボス戦の時もよ。まさかアルゴさん経由で知ったの?」
可笑しい……と、キリトは率直にそう思った。
何せHPバーの横にはちゃんと、《Kirito》《Asuna》《Guza》と未だ記されているからだ。
アスナにだって見えている筈なのに、何故名前を呼んだ事とアルゴが関係してくるのかと悩んで……一つの答えに辿り着く。
「ああ……アンタ、パーティー組むのって初めてだよな?」
「そうだけど」
「……左端にさ、HPバーがあるんだけど、その横に書いてあるだろ? ……あ、顔を動かすと付いてっちゃうから眼だけ動かして」
言われるがままアスナは目線を動かし、今まで視界の端にしか存在しなかったHPバーを真ん中近くへ持っていく。
「き、りと……キリト……コレがあなたの名前?」
「ああ」
そこに書いてある名前を見て、初めて己の口でアバターネームを口にし、漸くキリトが自分の名を呼んだ事に合点が行ったらしかった。
アスナは数秒黙った後、軽く溜息を吐いて、景色を見やる。
「じゃあ、伝えたい事も伝えたし……私はもう戻るわね」
「わかった……先にってるよ、アスナ」
「ええ。すぐに追いつくから、まってなさい」
其処で会話は本当に途切れ、キリトはそのまま歩き出す。
アスナは振り向いて第一層と第二層の階段がある扉の方を向き……其処の前に一人の人間がそ〜っと―――何処ろか堂々仁王立ちして、此方を見ている事を初めて知った。
「グ、グザさん! 何時から其処に!?」
「ああ、『エギルさんからの伝言』の時からだわな」
「ほぼ最初からじゃないですか!!」
「ちなみにエギルも来とるけどね」
「ちょ……バラすなってグザ……!? ……お、俺はこれにてじゃあな!」
「そんじゃ、オレちゃんもトンズラ〜っと」
「待ってくださいエギルさん! グザさん!! まさか今の情報を売る気じゃないでしょうね!?」
言い合いながら階段を下りて行くアスナ等の会話を背に、キリトは草原を一歩一歩踏みしめるのだった。
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