十一節・ほんの僅かな暗雲
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た。……でもまぁ勝利を捧げるには、もっとピッタリな奴が居ちまってるけども」
「ははは……確かにな」
言いながらキリトは視線を傾け、会話しながら歩いてくるアスナとグザを見やる。
踏み込むきっかけを作ったのはキリトで、それを補佐し盤石なものとしたのはアスナ。
初めに支えて基盤を作ってくれたのはエギル達、B隊。
だが…… “諦観” や “恐慌” という名のダムを決壊させたのは、他ならぬグザの超人ぶりだろう。
タダでさえ一匹一匹が強敵で、キリト達は容易く葬って居る様に見えたが……それもコンビネーションや、事前知識があってこそ。
第一層時点に置いて言うなら、決して雑魚に入らない実力を持つ《ルインコボルド・センチネル》を、グザは三体も相手にしつつ士気が整うまでの間ずっと捌き切ったのだ
普通のゲームと違い、プレイヤー本人が身体を動かしてアバターを操作するフルダイブゲームだからこそ、そして僅かとはいえモンスターMobとのレベル差があったからこそ、成す事の出来た驚異的な芸当。
例えゲームの域に収まろうとも、しかしゲーマーの域に収まる様な人間では断じて無い、凄まじい技量だと言わざるを得ない。
(本当に何者なんだ、グザ……あんたは……)
「だから! あんな動きが何もしていない人に出来る筈ないでしょう!?」
「いーやいや、そう決めつけるのは良くないわな。本当にオレちゃん、何もしてねー人間よ?」
「あーもう! っ……はぁ……もういいです」
何が発端か実にのんびりとした会話を繰り広げる彼等を見て、最後まで心の隅に引っ掛かり続ける張った気が、すんなり千切られ緊張が解けてしまう。
ふと顔を上げてみれば、エギルが苦笑しつつも拳を突き出してくる。
キリトは一瞬躊躇うもちゃんと拳の打ちつけ合いに答え、続いてパーティー二人の方を指差され、何が言いたいかをすぐに理解し頭を掻きつつ歩み寄る。
「えーと……こういう時、何つぅんだっけか? コーングラッツ?」
「食べ物みたいになってるじゃない……コングラチュレーションよ」
「早々それそれ、それだ。ホレ、お決まりぶつけようや、キリトの坊主」
槍を担いだままにグザの左手が掲げられ、アスナもそれにならって咳払いの後右手を上げ……エギルの後だからかすんなりキリトも手を掲げる。
やがて距離は近くなり、四つの手が通り過ぎ様に重なり―――――
「なんで……っ!? なんでだよっ!? 」
たった一つの悲鳴染みた叫びが、歩みも手の振りも強引に留めた。
お祝いムードのそぐわぬ、ほぼ泣いている様なその声に、周りの物たちの騒ぎも止み、再び閑散とした部屋に逆戻りしてしまった。
声を上げたらしき
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