Vivid編
第七話〜踏み出す〜
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分厚さから一時間ほどでそれを読み終えた彼の第一声がそれであった。
レジアスの顔に浮かぶのは困惑や戸惑いというよりも、疑念である。本気でこんなことが実現できるのかと言う確認も込めた彼の視線をライは真っ向から受け止める。
「はい」
「こんな――――管理局の“陸”に代わる、ミッドチルダの守護のための外部組織の編成など…………」
ライの持ち込んだ資料の本質を口にし、その議題の大きさにレジアスは思わず自身の顔に手を置いた。
「交渉材料次第で局の中と外にも協力者は得られる。要はやり方しだいだ」
自身の考え、そして自らの本質を晒すようにライは敬語を使うのをやめる。
「要点を纏めれば、管理局の“陸”と言われるミッドにおける治安維持部隊を無力化とまでは言わないが、少なくともハリボテの状態にし、政治的にも武力的にも力のある治安維持組織を編成する」
「……絵空事だ。第一それに賛同する人間など」
そういうレジアスの言葉を遮るように、ライはポケットから蒼月を取り出すとあるリストを空間投影ディスプレイに写すように出力した。
「かつて陸に所属し、上司の出世や自己保身の為に切り捨てられたメンバーリスト。そしてその中から思想的に問題がないと判断した元局員たちだ。生憎と切り捨てられた人間全てかどうかは分からんがな」
「儂を脅す気か!」
そのデータを見せられた瞬間、レジアスは反射的に腰を浮かし怒鳴り声を上げていた。
だが、レジアスの見せた怒気をそよ風のように受け流し、ライは絶対零度の瞳で口を開く。
「侮るなよ。既に退役した御身を脅したところで、自身が得られる利益など微々たるものだ。それに目先の利益などという瑣末事にかまける程、自分は堕ちてなどいない」
ライの言葉に火が消えたように、レジアスの怒気は霧散する。そして先ほどの脅す云々がどれだけ馬鹿な物言いかを冷えた頭が理解すると、レジアスは先の自分を内心で恥じる。
「……話を続けようか?」
「っ!」
ライの言葉に反応し、彼は再びソファーに腰を下ろす。しかし、そこには入室した時のような余裕は皆無であった。
「交渉はまだ行っていないが、誘えば彼らは必ずこちらの誘いに乗る」
「……なぜそう言える」
「彼らは管理局に押し付けられたレッテルで定職に就くこともままならず、日銭を稼ぐので精一杯の生活をしている人間がほとんどだ」
「安定した職であるのであれば、この誘いを断ることはできないということか」
どこか疲れた声のレジアスに構いもせず、ライは話を続ける。
「もちろん人員に関してはそれで全て事足りるとは思っていない。必要であれば現管理局員の中でも不満を持つ者は大勢いる。その中から引き抜けばいい」
耳の痛い
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