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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十五話 敗戦
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リューニヒトか、軍に勢力を伸ばす事しか考えていない男にわかるだろうか。この軍の惨状が。
「順当に行くならボロディン提督、ウランフ提督、クブルスリー提督の三人から選ばれるでしょうね。あるいは思い切ってビュコック提督という人事も有るでしょう」

「ビュコック提督か」
ちょっと驚いたようだ。
「士官学校卒業では有りませんが、兵の人望は厚い。今の現状では適任でしょう」
「なるほどな」

「シトレ元帥に伝えますか」
「フン、判るか?」
「シトレ元帥は出来れば自分に対して協力的な人物をほしがっている。そうじゃありませんか?」

「否定はしない。しかし保身のためじゃない。ロボス総司令官は自滅に近い。シトレ元帥へのライバル意識がこの事態を引き起こしたと元帥は考えている。俺も同感だ」
確かにそうだ。否定は出来ない。それを彼に利用された…。

「ヤン、帝国でなにが起きたと思う?」
「判りませんね。しかし、遠征軍を呼び戻したのです。帝国内で軍事的な緊張が生じたのだと思います」

「軍事的な緊張か、何かな?」
「…皇帝が死んだか、重態、一番可能性が高いのはそれでしょう」
「……」
「皇帝は後継者を決めていません」
「後継者争いか」
私は頷いた。

「皇帝の容態は以前から思わしくなかったのかもしれません」
「何故そう思う」
「ミュッケンベルガー元帥は今回の事態を予測していた可能性があります」
「どういうことだ?」

「今回の遠征軍に彼がいません」
「彼? 」
「ヴァレンシュタイン准将、いや少将です」
「…しかし、彼がいないからといって…」
私はキャゼルヌ先輩の言葉をさえぎった。

「彼が今どこにいるか判りますか?」
「いや、知らない」
「情報部から宇宙艦隊司令部に回ってきた情報によると兵站統括部です」
「兵站統括部、どういうことだ。兵站統括部といえば…」
キャゼルヌ先輩もおかしいと気付いたらしい。
「彼が行くような場所じゃありません」

帝国では補給担当将校の地位は同盟より低い。それも圧倒的にだ。何故そこに彼がいる。
「ミュッケンベルガー元帥の不興を買ったということは無いか。副官をこちらに戻そうとしたのだろう、彼の怒りを買ったということは…」
「有りません。イゼルローン要塞攻防戦の後、彼はすぐに兵站統括部に異動になっています。しかし、今回の遠征計画の作成には参加している。不興を買ったというのなら計画の作成に関与するとは思えません。もしかするとティアマト方面への陽動も彼の発案かもしれない」
「…」

「遠征中に皇帝が死去して、国内で内乱が発生したらどうなります」
「補給を含めた後方支援は滅茶苦茶だろうな。…そうか、だから兵站統括部に」
「それもありますが、もし、反乱を起した者たちがミュッ
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