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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十五話 敗戦
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政治的混乱が起こったのでしょう。具体的には反乱か或いは皇帝が死んだのかもしれません。もちろん推測にしか過ぎませんが」
周囲がざわめく。“皇帝が死んだ?”、“あり得る”などの声が上がる。
「なるほど」
「追撃だ!」
いきなりロボス総司令官が叫んだ。
「敵を追撃し、一撃を与える」
「おやめになったほうがよろしいでしょう。敵は敗退しているのではありません。勝った上で撤退するのです。十分な備えをしているに違いありません。安易な追撃は返って危険です。むしろ敵に合わせてこちらも引くべきです」
「なにを言うか。政治的混乱が起きたのなら、敵は帰国するので気もそぞろであろう。十分な備えなど出来るはずも無い、追撃だ」
眼が血走っている。体も少し震えているようだ。まともな判断力など有るのか?
「閣下、ヤン大佐の言うとおりです。これ以上の戦いは避けるべきです。後退しましょう」
「追撃するのだ、参謀長。このままでは軍の名誉は…」
「帝国軍は撤退しております。同盟は守られたのです。これ以上は無理です」
「参謀長の仰るとおりです。第一、補給も十分でない現状で追撃など不可能です」
話しているのは私と参謀長だけだ。他の参謀はみな白けた顔をしている。名誉などと言っているが、ロボス総司令官が自分の地位を守るため、帝国軍を撃退したという実績が欲しいための追撃論だ。誰もまともには取り合わない。皆の頭の中でロボス総司令官は既に更迭されているだろう。
だれも自分の意見を支持しないとわかったのだろう。ロボスは不満げに口を捻じ曲げると“腰抜けが”と吐き捨て艦橋を出て行った。
同盟軍は首都ハイネセンに向かっている。私はキャゼルヌ先輩と話をしていた。場所はキャゼルヌ先輩に与えられた補給将校用の部屋だ。部屋には書類が山積みになっている。
「よかったよ。追撃など行なわなくて」
「全くです。ロボス総司令官の保身のために無駄な犠牲を出すなんて馬鹿げています」
「それよりも補給が間に合わなかった。追撃途中で補給切れなんて事になりかねない」
首を振りながらキャゼルヌ先輩が答える
「そこまで酷かったんですか」
「ああ、補給はほとんどがティアマト方面に行っていた。今こちらで補給をすぐ行なえと言われれば民間に頼らざるを得ない。しかしな」
キャゼルヌ先輩の表情は苦い。おそらく私も同様だろう。
「だれも引き受けないでしょう」
「その通りだ」
「ロボス総司令官も更迭だな。国防委員長にとってロボス総司令官の更迭は痛手だろうが次の宇宙艦隊司令長官はだれだと思う?」
「難しいですね。宇宙艦隊は厳しい状態にあります。再建も大変ですが、信頼も失いました。この状態を切り抜けるのは容易ではありません」
「国防委員長はその当たりをわかっているかな」
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