第四話 変化の兆しその九
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「私のたった一人の家族なので」
「だからこそですね」
「何があってもです」
自分にだ、必死に言い聞かせる言葉だった。
「一緒です」
「そうですね、家族なら」
「これまでずっと二人でした」
両親がいなくなってからというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「何があっても守ります」
絶対にというのだ。
「そうします」
「その答えをですね」
「出します、必ず」
優花を守る、この気持ちは絶対だった。
だが現実をまだ受け入れられない、それでこうした言葉を出したのだ。
そしてだ、優子は自分から院長に言った。
「今は時間を下さい」
「はい、それでは」
院長も頷いた、そしてレントゲン科の主任もだった。
優子にだ、優しい声で言った。
「このことは私達三人だけが知っています」
「そしてですね」
「ここで約束します、私は誰にも言いません」
「私もです」
院長も約束してきた。
「ですから」
「このことは私達が守れば」
「弟は守れますね」
「そうです、蓮見先生も弟さんの為に」
「守ります」
秘密はとだ、そうしたことを話してだった。
優子は院長室から退室した、だがその日は。
現実と戦いながら過ごし仕事をしても上の空といった感じだった、そして仕事が終わってもそれからもだった。
家にそのまま帰ってだ、リビングで一人ウイスキーを飲むだけだった。
それもだ、一本で終わらず。
二本目も空けていた、優花はその姉を見て心配する顔で問うた。
「姉さん、二本目だよ」
「わかってるわ」
弟の方を見ないで答えた。
「安心して」
「いや、安心してって」
「飲んでることはわかってるから」
「いつもは一本なのに」
「こうした時もあるのよ」
「二本飲む時も?」
「飲みたいのよ」
言いながら自分でグラスにウイスキーを入れて飲む、ストレートで肴も口にせず。
「今は」
「それでなんだ」
「飲むのよ」
それでというのだ。
「今はね」
「何かあったの?」
優花は優子にさらに心配する顔で尋ねた。
「それで」
「何もなかったわ」
優花の方を見ずに言った。
「別にね」
「本当に?」
「本当よ」
優花を見ないで言い続ける。
「何もなかったから」
「だといいけれど」
「だから気にしないで」
「ううん、ならいいけれど」
「これで止めるから」
二本でというのだ。
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