第二百四十八話 魔の島その七
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「出すぞ」
「はい、この島から」
「そうしましょうぞ」
「そして後はです」
「戦ですな」
「そうしようぞ」
こう言うのだった、そして実際にだった。
雑賀は雑賀衆の全ての船を東から北、南に配させた。そうして島に近付くと。
雑賀の船に乗る忍の一人が島の中を指差して言った。
「棟梁、やはり」
「おったか」
「はい、闇の衣の者が」
「そうか、やはりな」
そう聞いてだ、確かな声で頷いた雑賀だった。
「おったが、あの島はやはりな」
「鬼ヶ島でしたか」
「かつて桃太郎が攻め入ったという」
「あの島でしたか」
「桃太郎は確かに鬼を退治した」
そのことは間違いないとだ、雑賀は言った。
「そしてその鬼はじゃ」
「魔界衆であった」
「そうだったのですな」
「その正体は」
「実は」
「そうであったのじゃ」
まさにというのだ。
「実はな」
「でしたか」
「鬼はまつろわぬ者」
「土蜘蛛等と同じく」
「魔界衆こそはまとつろわぬ者」
「それ故に」
「同じだったのじゃ」
鬼は即ち魔界衆だったというのだ。
「どちらもな」
「では、ですな」
「我等はこれより桃太郎の様に」
「鬼ヶ島に入りますか」
「そうする、しかし退治はせぬ」
ここでもこう言う雑賀だった。
「退治するには数が多い」
「だからですな」
「ここはあえて近寄り」
「逃げ道を置いたので」
「そこから逃がさせる」
「そうしますな」
「どうやら敵はまだ我等には気付いておらぬ」
雑賀衆にはというのだ。
「だからな、数を多く見せて近寄るぞ」
「では音をですか」
「大きく立てていきますか」
「ここは」
「そうする」
まさにというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「これより」
忍達も頷いてだった。
雑賀衆の船達は島に徐々に近付きだった、そうして。
鉄砲を放ち炮烙も投げてだった、そして。
その音でだ、激しく音を立てて。
島に上がった、その時にだ。
雑賀は自ら先頭に立ってだ、叫んでいた。
「後に続け!」
「はい、我等が先陣として」
「そのうえで」
「後には上様が続きます!」
「その足場を築きましょう!」
他の者達も叫ぶ、そのうえで。
目の前に出た魔界衆の者達を倒す。それを受けてだった。
魔界衆の者達も浮き足立った、そうして棟梁達に報告した。
「大変です、幕府の軍勢が来ました」
「その数はわかりませぬが」
「どうやらかなりの数です」
「鉄砲や大砲を撃ってきてです」
「恐ろしい勢いで攻めてきます」
こう言うのだった、そして。
棟梁達のいる場所からも轟音が聞こえてきた。それでだった。
棟梁達もだ、老人に対して問うた。
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