巻ノ三十四 十勇士その九
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「あの者にも声をかけたい」
「左様ですか」
「うむ、当家の為にな」
「策ですか」
井伊もまた難しい顔で言った。
「戦と政だけでなくですか」
「羽柴殿と向かい合ってわかった」
またこう言った家康だった。
「当家にもそれが必要じゃ」
「だからこそ」
「わしもそれを使える者を召抱えたいのじゃ」
「しかし」
「そうです、あの親子といいです」
最後に榊原が言って来た。
「その崇伝という者も」
「その性根がか」
「気に入りませぬ」
「確かに当家の色ではないな」
「三河武士はです」
榊原は彼等自身のあり方もだ、家康に述べた。
「武辺と忠義のです」
「その二つか」
「それによって生きて死ぬものであり」
「策はか」
「用いぬものですが」
「わしもそう思うがじゃ」
それでもと言う家康だった。
「この度でわかったのじゃ」
「それなのですか」
「あの者達を召抱え」
「策も用いていきますか」
「そうしたい、今後の為にもな」
こう話してだった、家康はこれからのことも四天王達と話した。そしてその話の後でこうも言ったのだった。
「そして真田家じゃが」
「はい、あの家にはむ手出しが出来ませぬ」
「もう何もせずにですな」
「置いておきますな」
「そうする、しかしまた赤備えに敗れたか」
家康が言うのはこのことだった、ここでは。
「武田家といい」
「はい、真田家も赤備えですし」
「元々真田家の家臣でしたし」
「その赤備えにですな」
「我等も」
「当家にも赤備えはあるが」
井伊を見ての言葉だ、実際に家康は彼の軍勢には具足も旗も全て武田家の強さを徳川に入れさせる為にそうさせているのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「また赤備えに敗れましたな」
「当家は」
「このまま赤備えに勝てぬのでは」
家康は袖の中で腕を組み述べた。
「武門の名が廃る」
「ですな、確かに」
「このままでは」
「この雪辱は晴らしたいが」
家康は腕を組んだままで言った。
「しかしそれはじゃ」
「今は、ですな」
「その機会がない」
「左様ですな」
「それが厄介じゃ」
難しい顔のままで言う家康だった。
「しかしそうは言ってももう戦をすることがないのなら」
「その真田家とは、ですな」
「今は手を結ぶ」
「そうしますか」
「ここは」
「うむ、真田家から話があるであろう」
それを既に見抜いている言葉だった。
「それは受けてな」
「そして、ですな」
「真田家とは」
「手を結んでいこう」
現実を見てだ、家康は断を下した。
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