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―――戦場は敵と味方で入り混じっていた。
傭兵達の役目はシンプルだ。
敵と見たら攻撃しろ、以上である。
ただ味方となる正規兵の装備を覚え、傭兵であると思われる装備もある程度把握する。
それ以外の兵士は敵である。
国境の境目ではなく、少しデトワーズ国内の内側に位置する傭兵の砦は、敵と見れば攻撃すればいいだけの暴力的なお仕事だ。
だが逆に言えば、そこに統率というものはない。
全周囲に味方がいるし、敵もいる。
誰が誰なのか判別する暇のない目まぐるしい戦場。
傭兵ならよくある状況だ。
こうなってしまえば互いに消耗し続ける乱戦だ。
敵が、味方が、敵兵が、傭兵が、戦場の中で入り混じって殺しを繰り広げる。
どちらかが全滅するか撤退するか、そんな泥沼な戦い続く……かのように思われた。
「オラオラオラァ! どけどけぇ!!」
ある一人の傭兵がいた。 ある一人の敵兵がいた。
『ぐべっ!?』『ぶはぁっ!?』
その二人は―――拳によって平等/無差別に“轢かれた”。
一瞬の出来事。
この乱戦の中では何が起きたのか理解する暇もなかった。
敵味方入り混じる戦場に戦車が突っ込んできたのか、と彼らは思っただろう。
しかし彼らを轢いたのは、馬ですらなかった。
「ひ、姫様ぁ!? 今、人が…人が飛ばされましたよぉ!?」
「殴り飛ばしてるんだから当たり前だろ!!」
そう、それはエルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズ姫陛下。
彼女が振り回す“拳”が彼らを“轢いた”のだ。
信じられない光景だが…彼女の拳が当たれば、人は飛ぶ。
それこそ砂利のように、接触しただけで人が飛びまくる。
「ひえー! また人がー!?」
ムチャクチャだ、色々とブッ飛んだ光景だ。
自分は引き摺られるようにして、エルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズ姫陛下に引っ張られていた。
エルザ姫は、僕と言う大の男の重量を難なく“引き回し”、戦場の中を暴れ牛の如く“轢き回し”ている。
だがむしろ、エルザ姫の所業は暴れ牛の方が可愛く見えるくらいだ。
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