プロローグ
のんびりとした始まり
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茶碗を突きだす。
ちなみにキツネとは狐珀の愛称のようなものだ。狐珀という名前に「狐」の文字が入っている為、クラスで広がり、ついには五河家でもそう呼ばれるようになった。しかし、別に嫌ではない。
「私もまだ足りんぞ!」
それに対抗するかのように、士道の同級生でありながらカップル?であり、そして同居人でもある<夜刀神 十香>が腰まであろうかという夜色の美しい髪をふわっと振り、水晶の如き無垢な瞳を狐珀へと向け、手描きのきな粉パンの描かれた茶碗を突きつけた
「はいはい」
二人の茶碗を軽く身を乗り出し取りあげるとスリッパでぺたぺたと音を立てながら歩き、ご飯を二人とも言われた通りにまるで大盛りが売りの店みたいに茶碗なんかには収まりきれない量をよそい、杓文字でポンポンとある程度叩いて形を丸くするとどんと二人の目の前に置いた
「ありがと〜キツネ〜♪」
二人とも満面の笑みで目の前に山のようによそわれたふっくら白ご飯見て箸で士道でも軽く驚く程度の量を取り、大きく開けた口に口いっぱいに含みもぐもぐと口の中に入っている白ご飯とふりかけの味を楽しんでいた。
自分が入れたものをそんなに上手そうに食ってくれるのは、まぁ、なんというか、笑みがこぼれそうになる。
「ごっそさん。悪いな手伝って貰って」
二人をほほえましそうに見ている狐珀の後ろを通って長方形のおぼんに乗せられたお茶碗等を流し台の隣に置く
「これぐらいしか恩返し出来ない」
「そうか?」
「それに、人の幸せを見てるのは楽しいから」
狐珀の声は、少し喜んでいるようだった。
何で顔じゃないのかというと、失感情症という病気となってしまったのだ。つい一年前に起こった「日本海上空大空災」という大きな空間震の影響で家族旅行で出ていた両親も両祖父母も、姉も妹も失ったのだ。その時の絶望感で失感情症という文字通り感情を失う病気にかかったのだ。
そして、その家族全てを失った空間震とは、簡単に言うと空間の地震と称される、広域振動現象のことだ。
発生原因不明、発生時期不定期、被害規模不確定の爆発、振動、消失、その他諸々の現象の総称だ。
まるでハリウッド映画みたいに大怪獣が現れ、町を破壊していくような他のどの災害よりも理不尽極まりない現象。
この現象が初めて確認されたのは、およそ30年前のことである。
ユーラシア大陸のど真ん中―――当時のソ連、中国、モンゴルを含む一帯が、一夜にして月に出来たクレーターみたいに消失した。これは後にユーラシア大空災と呼ばれることになった。
士道や狐珀のように高校生になれば、教科書で嫌という程教わっている。
まるで、地上にあるものを顔がまん丸い巨大な化物が喰らったよう
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