第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
5話 融骸の怪
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ない。その結果、本体では無効化出来たはずの剣による攻撃を甘んじて受けるしかない。そして破壊されただけ、ポリゴン片として仮想の空気に融けだしてしまっただけ、ダメージとして本体にフィードバックされる仕組みなのだろう。心なしか体積も減って小さくなったようにも思える。なんとも難儀な話だ。
「とにかく、取り巻きを潰しまくれば良いのよね。根競べよ! 頑張れスレイド君!」
「ホントに楽しそうだな」
「楽しいなんてモンじゃないわよ。育成したモンスターを対戦させてる気分だわ」
「俺はアンタに育てられた覚えはない」
しかし、無駄口が増えたのは精神的なゆとりが生じたからだろう。HPの減少幅から見て、取り巻き七体でバー一本当たりの四分の一が削れるらしい。つまり、残り四十九体を倒す頃にはカラティンも倒せているという計算だ。先が長いように思えるが、そもPTで挑むのであれば適正なのだろう。骨の折れる事だが、これも已む無し。蹴散らすまでだ。
石像を砕き、骨を断ち、剣と拳の二刀流を振るいながら異形を仕留める。そもそも、石像はともかくとしてスケルトンには片手剣による攻撃が通じるし、骨や石像が毒液を撒き散らす点にさえ目を瞑れば防御力の低下が酷く目立つ。そうなればここへ至るまでの通路よりもダメージ効率は上昇することになる。結果は目に見えていた。カラティンのHPも順調に減らされて一本目が消失したことで、後方からグリセルダさんの歓声が僅かに耳に届いた。ようやく折り返し、俺自身の損耗もHPにして三割程度。このまま決着を………と思っていた矢先、カラティンに変化が訪れた。
「………震えてる、わよね?」
当初の半分程度までに縮んだカラティンは、グリセルダさんの指摘通りに震え出したのである。
振動は徐々に激しさを増し、次第に気泡を表面に浮かべるまでに達する。爆発でもされると恐いので、一応はグリセルダさんと同じ位置にまで後退して警戒を強めると、その答えは呆気なく明かされる。
風船か水泡が破れるように、カラティンが爆ぜたのだ。
黒いゲルを構成していた液体は広範囲に弾け飛び、堀や石畳に残骸や人骨を零す。代わって、その中央の石櫃に立つ黒い人型があった。カラティンが陣取っていた位置に佇み、片手剣ほどの刃を誇る槍を携えている。シルエットは女性らしい。かなりはっきりとしたラインの身体に、肌と同色の薄布をベールのように被っただけのそれは、しかし、何者かという議論は無意味だった。その存在は、カラティンのカーソルをそのまま引き継いでいたのだから。
変形、或いは変身か。
第一層のフロアボスでも装備の変更という程度であったが、取り巻きを生み出すスライムから槍を携える女性へと変貌するとは考えてもみなかった。
カーソルに示された固有名も《Madb
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