第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
5話 融骸の怪
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ど俺も大らかではなかったようだ。
「そこから離れろッ!!」
「………ッ!?」
鋭い叫びに対して、咄嗟に反応したグリセルダさんは俊敏に身を転じさせつつ俺に並ぶ。
すると間もなく、水溜まりは獲物を諦めて石畳の隙間に滲み込んで失せてしまう。何事かと不審に感じる隙さえ与えずに、中央の堀からゴプッと粘性の強いものが湧き出るような音を聞いた。
「何なのよアレ」
「………試練、だろうな」
言いつつ剣と盾を構えるグリセルダさん。
その視線の先には、堀の内側に溜まった人骨や石像の破片を取り込んで肥大化した黒い液体が蠢いていたのである。天頂部からは何かを求めるように手が伸び揺らめき、まるで生き物の真似事をしているかのような不格好な存在が姿を現した。見た目の悍ましさは、おそらくこのSAOにおいて上位に食い込む勢いだろう。どこが正面なのか判りかねる黒い魔物は身体を震わせ、石か骨の軋みと泡立つような液体が織りなす呻きのような音を咆哮の代わりに、とうとう赤いカラーカーソルと二段構成のHPバーを掲げて害意を示す。
《Calatin The Avid Fusion》
それが、眼前の名状しがたいネームドボスの名だった。読みは《カラティン》だろうか。
「なんだか、ここに来て唐突なネーミングね………薄気味悪いし………」
「通路に人骨が転がってなかったのは、もしかしたらアレがここに運んでいたのかもな」
「やだ、考えれば考えるほど気持ち悪いわね。で、今回はどうするの? 流石にソロでボスは無謀じゃないかしら?」
「いや、それは様子見をしながら考えよう。カーソルの色調で言えば、そこまで強そうな相手ではなさそうだけど」
そう、いかにネームドボスと言えども発見の遅れたダンジョンであることから、プレイヤー優位にレベルの差が開いてしまっている。適正レベル真っ只中のグリセルダさんもその気になれば戦闘は可能だろうが、それは複数人のPTが役割を分担した上での事だ。たった二人ではヘイトコントロールの観点から見ても参戦は好ましくない。あくまでリザーブメンバーとして待機してもらうとしよう。
………と、作戦を構築する間に、カラティンは身を震わせて骨や残骸の混じった黒い粘液を床に零し始める。
蠕動とも脈動とも見える動きを数回繰り返し、分離した液体は固形物を骨子に幾つかの不格好な形を作った。一つは歪な人型。細い骨にへばりつくような粘液はまるで剥がれかけの筋肉のようで、その多くを剣を握る石像の右腕との接合に割かれている。もう一つは、腰から下を失って腕だけで這いずる格好の石像。下顎が欠け、そこから黒い粘液が滴っている。通路側の石像もこうして動かしていたのだろうか。実際に門番の肩の接合部には、それらしいものが見えた。同様のもの
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