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第一章
おぞましい鏡
とある高校の職員室前にある大きな鏡にだ。怪しい噂が広まっていた。
その鏡を夜遅くに見るとだ。何かがあるというのだ。
「何かって何だよ」
「っていうか学校に夜遅くに行く奴いねえよ」
「そんなの誰が見るんだよ」
「どうしてそんなことわかるんだよ」
これが生徒達の言葉だ。夜遅くに学校に行くことのない彼等のだ。
「大体そんな怪談学校じゃ付き物だけれどな」
「今更そんなこと言われても驚かないっての」
「それこそガチホモスカトロ軍団が町占領する方が怖いよな」
「奈良県のマスコットが日本を侵略してきたりとかな」
彼等は自分達が想像できる中で最も恐ろしいものを言ってみせた。
「だよな。公園のベンチにやらないかの兄ちゃんがいるとかな」
「そっちの方が怖いよな」
「それで何があるんだよ」
「鏡に自分の死ぬ顔が出るとかか?」
真夜中の二時に鏡を見るとそれが出て来るという話がある。
「それか悪魔が出て来るとかな」
「あれって合わせ鏡にしたらだろ?」
「まあとにかく何があるんだよ」
「どうせ何もないって」
生徒達にとってはこの話はこうした大したことのない有り触れた学校の怪談に過ぎなかった。どうでもいいことでしかなかった。
だが、だ。先生達、当直をする彼等から見ればだ。
この噂話はだ。無視できないものだった。
先生といえど人間だ。人間ならそうした話はどうしても気にするものだ。かなり頭の硬い否定論者でもない限りだ。無意識のうちにそうなる。
それでだ。先生達はだった。職員室や飲み屋でだ。ひそひそと話すのだった。
「あの鏡の話は本当でしょうか」
「どうでしょうかね」
「見たって人はいないですが」
「というよりあそこに真夜中に誰も行かないですし」
怖いからだ。当直の見回りでもそこはあえて避けているのだ。誰も。
それで確めた先生はいなかった。だが、だ。
新任のだ。青鷺潤先生、学校では一年のあるクラスの副担任で国語を教えている先生だ。黒髪を女の子で言うボブの感じにして太い眉を整えている。一重のやや切れ長の細い目に広い一直線の口、高く立派な鼻を持っていて白い頬がすっきりした顔の先生だ。何処か韓流スターみたいな感じだ。ただ背は韓国の俳優程高くはなく一七〇程だ。
その先生がだ。笑いながらこう他の先生達に話した。
場は居酒屋だそこでビールをジョッキでぐい、とやってからだ。先生は言うのだった。
「そんなの何もないに決まってるじゃないですか」
「じゃあ青鷺先生はですか」
「あの鏡を見ても何も怒らない」
「そう仰るんですね」
「はい。絶対に何もないですよ」
青鷺先生は笑顔でまた話した。
「そんなの何処にでもあるお話ですけれど
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