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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第13話 幻の世界
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で揺れる思春期の中学生らしい不均衡な成長にサソリは暴れるのをやめて自分に頼りなく縋り付いてくる白井のしたいようにさせるために身体を静めていた。
「ちっ!しょうがねえな」
軽く悪態をつく。
覗いた感情に翻弄されながらもサソリは気持ちを落ち着かせるように呼吸を整える。
サソリは目を閉じて、自分の幼少時代を思い出していた。
両親がいない寂しさ
人形にだけ居場所を求めた青春
人とのかかわりを絶ち、傀儡という究極の芸術をたった一人で探求する孤独感と恐怖感。
自ら選んで独りになり、進んで孤独になり人を寄せ付けずに歩いていく。
白井がまさに歩んでいく道とサソリの道が交差したように感じた。
人と分かり合うのを諦めて、人形だけを相手にしてきたサソリには写輪眼から流れてくる。感情の波の強さは頭の中から強い痺れを持って全身に広がっていく。
頼ることも頼られることもしなかった自分に助けを求めるように白井は涙を流したままだ。
「さ、サソリ?」
暴れるのをやめたサソリに対して、御坂が声を掛けた。
白井を引きはがそうと腕を握っている御坂と初春を制してそのままの状態にした。
まるで子供をあやしている父親のように。
「結構、きついことをやってきたんだな……コイツ」
写輪眼から流れてくる白井のジャッジメントとしての活動を見て呟く。

正義の味方になること
言うは簡単だが、実行していき、続けていくのはかなり難しい。
自分だけの幸せだけでなく、他の人を守るという白井の強い使命感にサソリは、自分にはない覚悟の強さを見出す。
まだ年齢的には親に甘えていたい頃であろう。
写輪眼の開眼は、サソリにとって予期せぬ能力を与え続けていく。
写輪眼を軸にしてあふれ出す、強い感情。
感受性が一層強くなった。
今まで考えたこともない他人のこと……いや、考えるのを拒絶していた「痛み」
愛を知らぬ人形だったサソリに、愛のある「うちは一族」が力を与える。
まだまだ未熟、しかし大きな転換点。

濁った眼で泣いている白井の眼をじっと見つめる。
抵抗も力もなくなった白井の腕から自分の腕をするりと抜け出すと、白井の頭にポンと乗せて、慣れない手で不器用にも撫で始める。

どうすりゃいいんだよ……

なんか興を削がれた気分となって、表情では鬱陶しそう瞼の上を眺める。
撫でる時には白井の頭に触れる寸前で一瞬だけ躊躇すると前から後ろへと流す。
普段のサソリなら絶対にしない行動だ。
自分と同じような寂しさを抱える子供をこれ以上増やしたくないし、体験してほしくなかった。
「なあ、御坂」
「な、何?」
「ここは一体何なんだ?」
サソリの眼には奇妙にさえ見えた歪な世界。
まだガキの年齢で全ての責任や厄介ごとを押し付けてくる理不尽な世界。
子供だけの世界。

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