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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第13話 幻の世界
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よく見れば傷だらけの身体で自分を助けに来てくれている。
体温を感じ、気持ちよさを感じているときにサソリは軽々と白井を背中へと乗せた。
紅い眼をしたサソリに背負われて、真っ暗な道を抜けていく。
小さい時に親に背負われていたかのような安らぎ。
周りに怖いものや暗闇があろうが関係ない、サソリが着ている外套のフワフワとした部分に顔を埋めて目を閉じる。
全てを預ける安心感があり、とても居心地が良い。
そして、扉を抜けた先に眩い光に包まれていく。
一瞬目がくらんでいくが、次第に眼が慣れてくると
見慣れたベッドがあった。常盤台中学の寮で白井と御坂が使っているベッドだ。
こ、これは……!
白井の頭が目まぐるしく反応した。
ベッドがある部屋でうら若き男女がすることはただ一つ……

黒子
黒子
声がした方向を見ると、ベッドの上にはパジャマを着崩して着ている御坂がなんとも悩まし気なポーズで白井にウィンクしていた。
サソリが降ろすと白井の背中をポンと押して
行ってこい
女として立派になってこい
と力強いアドバイスを受けていく。恰好はすでに女の勝負服のパジャマである。

こ、ここで行かなければ女が廃りますわ
サソリからの妙な応援と、ぼやけた頭の中で己が取るべき行動が定まった。
白井は、足に力を入れると一気に駆け出してセクシーポーズをする御坂に向けてダイブを掛ける。

******

一方、現実の世界では
幻術に掛かった白井の姿に一同が困惑するなか
白井の意外な言動に言葉をなくす。
幻術に掛かったまま濁った眼をした白井に抱き着かれ、涙を流されている。
サソリの写輪眼に映ったのは、白井が心の奥底にある叫びのようなものだった。

恐い……
何もしたくない
人と接し傷つくのが怖い

サソリの写輪眼にだけ観える奇妙な声にサソリは声の主を探すように白井に抱き着かれたまま首を回して反応した。
写輪眼を有する「うちは一族」には、サソリや多くの忍が気づいていない側面があった。
すさまじい眼の能力を付与しながら、強力な瞳術を用いて忍世界を席巻していく驚嘆に値する始祖の者共。
しかし、その根底には「忍界一、情に脆い一族」でもある。
繊細で傷つきやすく、相手に深い愛情を持って接する愛のある一族。
その感受性の高さが写輪眼という特殊な眼に顕著に現れた。
相手のことを知りたい、何を考え、何を感じているのかを知りたくて得た瞳術。
目だけに力を集中させながらも、使い過ぎれば摩耗して闇の中に沈み、二度と光を宿さなくなる宿命を背負った哀れな一族。

サソリは幻術に堕ちた白井の心の一部を見透かすことができた。
白井が秘めている孤独感
寂しさ、恐怖感
相手と距離を取るような口ぶりとは裏腹に求める愛情や仲間

そのハザマ
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