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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第13話 幻の世界
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そう考えれば生々しいまでの機械的な動きと形態に変わる。
知ってはならない。考えてはならない。

オマエのセイデ……
ワタシはケガヲシタ……
ヒトをタスケル?
ジブンもマモレナイクセニ

ふと踏まれている足を見ると、先輩の人形が自分の足首を踏みにじっている。
正義なんて自分勝手のエゴでしかない。
もがいている白井の視界の端ではナイフを突きつけられている初春が瞬きもせずに落ちくぼんだ眼で白井を漫然と向けていた。

白井さんがいなかったら
私こんな目に合わなかった
なんで、こんな怖い思いをしなくちゃいけないの
もっと楽しくてやりがいがある職務だと思ったのに

初春も人形になって迫ってきている。
弱い者のために戦っても
お礼も言われない
感謝されない
むしろ何をしていたんだと罵られる
不良を力で抑えても恨まれて、今後狙われる
地面から数十本の木製の腕が伸びてきて、白井の身体を握りしめてくる。
恨みを晴らすように
鬱憤を晴らすように……

ジャッジメントにウザってー目に遭わされてきたんだ
一遍ギッタギタにしてやりたかったんだぜ

あの時に戦った不良がナイフを持って出てきた。
報われないセイギ
人のため、世のためにと考えるが現実がついてこない。結果がついてこない
泥沼へと足を取られるように白井は暗闇やと沈められていく
真水のようにすんなりと沈むのではなく、かなりの入るのに物理的な抵抗があるようにジワジワとゆっくりと自分の目線が下がっていく。
すんなりと入れないということは
入ったら、簡単には出て来られないことを意味する。
分かっている。
分かっている。
けど力が入らない
多くの人形に捕まれて、逃げることができない。
すっかり生気を無くし、生ける人形に自分もなってしまいそうになった。
涙が流れて、これが枯れたらジブンも楽な人形にナルんだろうなと思った。

おーいたいた
鈍り始めた眼に赤い髪をした少年が白井を見つけて嬉しそうに駆け寄っって来るのが観えた。
人形の腕を白井から引きはがして、白井の手を取ると身体を引き上げて、傷の有無を確認していく。
アザを触られて痛むように感じたが、先ほどの捩じり潰される痛みよりも数倍心地よく、数倍暖かい感触だった。
気がつけば白井は、暗闇の中でサソリに抱き着いていた。
暖かい
そして、こんなにここは寒かったんだ
温度が高いとか低いとかって人間から見れば相対的だ。
比較するものがあるから温かいとか寒いのがよく分かる。
寒さを振り払うようにサソリのゆったりとした外套に包まれた。
枯れるだろうと目論んでいた涙は、湧き出す源泉のように次から次へと目から零れていく。

はあー良かった
自分の身体を大切にしろよ
オレか、オレは良いんだよ

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