暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第13話?リトルプレイヤー
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「勢いに乗って走っちゃったけど、これからどうしたらいいんだろ……」
?リズから見えない位置まで走ったところで歩き始めながら、どうしたものかと腕を組む。お昼時ということもあり、たくさんの人が行き来し、街は賑やかさが増していた。
?リズに渡されたメモに書かれてあった素材は幸いなことに、ほとんど持っているものだった。残ったのはたった一つ。鉱石だった。
?――《ヘマタイト・インゴット》。それがその鉱石の名前だ。
?まったく僕には聞き覚えがない。一応、最前線で戦うプレイヤーの一人なのだが、リズにも話した通りダンジョンに籠っていることが多いため、世間の情報には疎かったりする。気がついたらボス攻略が終わってしまったことも一度だけあるほどなのだ。
「困ったな〜、どうしよう……」
?他の人に聞けば、知っているかもしれない。だけど、僕の知り合いは忙しい人や音信不通の人がほとんどだ。カイなんて攻略会議ぐらいでしか会うことがないし、何より連絡しようとしても返信が来ないことが多い。何度も注意しても聞きやしない。今度会ったらしっかり言わなければ。
?話が逸れそうになったが、とにかく僕に時間に余裕があって頼れるような人は思い付かないのだ。そもそも知り合いが少ない。
?何気なく歩いている道の端に並んでいる店を見ると、そこには店の影を目立たないように移動している見知った人物が見えた。タイミングがいいと言うべきか、まさに今の僕にぴったりの人だった。
?僕は相手に見つからないように、さっきとは違い足音を周りに不自然に思われない程度に自然に消し、静かに近づく。特に意味はない、何となくだ。
?徐々に距離を詰めていき、二メートル前後ぐらいの距離までになったとき、相手は細い路地に繋がっている右の通路に曲がった。僕も特に何も思わず曲がる。
「――おいおい、レディーの後ろをつけるなんて感心しないナ、ユー坊」
?曲がって目と鼻の先にいたのは、つけていた相手その人だった。この時点でようやく僕は尾行がバレていたことを察する。僕を見上げるその顔は、いたずらっ子のような、そして明らかに楽しそうな笑顔を浮かべていた。
?僕は乾いた笑い声を出しながら両手を挙げる。
「あはは……ごめん、つい出来心で。許してほしいなアルゴ」
?この世で唯一僕のことを「ユー坊」と呼ぶ目の前の女の子は、僕の謝罪を聞いて、さらにその笑みを深くする。フードを被っているというのに、その笑顔は鮮明だった。
「そう簡単に許されるなら、世の中にケーサツはいらないヨ」
「うっ……わ、わかったよ……何か欲しいものでもあるの?」
「そーだナ〜、オイラお昼ご飯まだだからナ〜」
「僕、もう食べたんだけど……」
「そーいえば、最近ユー坊がギルドに入りたいって言ってたナ〜。ねちっこい勧誘で有名なギルドに紹介しちゃおっかナ〜」

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