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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十三話 鉄の意志
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かない事は。ただ、感情が納得しきれないでいるだけだ。
「では、これより準備にかかります」
「キスリング中佐、夜間の巡回もお願いします」
「承知しました」
結局憲兵隊が動いた事が決め手となった。後は次々に少将の指示を仰ぎだす。全ての指示を出し終わるとリューネブルク少将がやってきた。
「ヴァレンシュタイン大将閣下ですか、なかなかよい響きですな」
「二階級特進ですからね。死ぬ気でやれ、そんなところでしょう」
この二人はまるで緊張感を感じさせない。どこかで楽しんでるんじゃないだろうか?
「どの程度、大将閣下でいられるのですか?」
「そうですね、陛下の御病状が回復するか、ミュッケンベルガー元帥がお戻りになるまでです」
「となると長くても一ヵ月半ですか?」
「そうですね。出来ればもっと短くなって欲しいですが」
「その可能性は?」
リューネブルク少将が声を潜める。
「……判りません」
ヴァレンシュタイン少将は首を振った。
「長くなる可能性も有るでしょう、遠征軍は大丈夫ですかな」
「…多分としか答えられません。戦場では何が有るか判りませんから」
「その場合、状況は最悪といってよろしいが、策は有りますか?」
「…有りますよ。覚悟もあります」
二人の視線が交錯した。しばらくじっと見詰め合う。
「……なるほど。後は閣下の運次第ですな、楽しみにしております」
そう言うとリューネブルク少将は司令部を出て行った。おそらく第二十一師団を呼ぶのだろう。
ヴァレンシュタイン少将は策も有る、覚悟も有ると言っていた。リューネブルク少将は後は運次第、楽しみだといっている。二人は一体何を言っているのだろう。リューネブルク少将はヴァレンシュタイン少将の目に何を読み取ったのだろう…。
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